恋ノ唄
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「……………」
「……………なぁ、」
あれからどれぐらい時間が経ったのか、ついにラビから口を開いた。
「…なによ」
未だにラビに抱きしめられているままで。
春花はと言えば、抵抗するのが面倒になったのか黙っている。
しかし頭の中では先程のラビの表情と、自分のセリフがぐるぐるとまわっていた。
―何も、間違ったことは言ってないとは思う。
でも、もう少し言葉を選ぶべきだったか。
ラビに、あんな顔させてしまうほどのことを言ってしまった。
ラビの顔を見上げて、呟いた。
「…ごめんラビ、そんな顔させてごめん。
でも、あたしはもう誰も信じられないと思う」
謝りながらも、自分の言ったセリフを覆すつもりはない。
信じることはできないし、信じるつもりも到底あるわけない。
それを言ったところで、ラビの表情が変わるワケもなく、余計悲しげな表情になってしまっただけだった。
しかし、すぐに何かを決意したかのような、力強い目をこちらに向けてきた。
「……春花が人を信じられないのは分かったさ。
―でも、俺は春花を信じる。
何も俺を信じろなんて言わねぇ。俺が信じるだけさ」
「――……ッ…っなにそれ…っ……あたしはもう信じないって決めたんだからっ!!
ラビがあたしを信じるのは勝手だけど、あたしは信じないから!!」
叫ぶように張り上げたその声は、涙交じりで震えていたように思える。
だけどそんなのを考えている余裕なんてなくて、
「…べつにいいさ。春花が俺を信じられなくても、俺は春花を信じる。
俺は、春花を裏切らないから、さ」
「――――ッ!!
―そんなコト言ってまた裏切るくせにッッ!!あたしはもう信じることはやめたのッ!!
人を信じて傷ついて……ッ…―もうイヤ!!大切な人に裏切られて、辛い思いして……!どこまであたしを傷つければ気が済むのよ……ッ…―」
泣き崩れる春花を、ラビはしゃがんで、思いきり抱きしめて耳元で囁いた。
「大丈夫さ。俺は裏切らないから」
「嘘だッ!!あたしは、ずっと――……っ…」
悲痛な叫び声。
今にも壊れてしまうのではないかというほどにボロボロにされて。
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