恋ノ唄
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――2時間ほど眠っていたのだろうか、太陽は既に結構高い位置まで昇っていた。
「……コムイさんのところ、行こう。イノセンス武器化してもらんなきゃいけないし…」
揺らぎそうになるその意思を、目を閉じ、集中することで揺るぎないものにする。
神経を研ぎ澄ませ、これから始まるであろう非日常でありながらの日常を見据えた。
「…大丈夫、あたしはやれる。決めたんだ。
―退屈な毎日から抜け出せた。今更怖がることなんてないんだから―…」
ゆっくりと息を吐き、コムイの住家ともいえる室長室へむかった。
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-コンコン
陽が高いとはいえ、まだ早朝といえる時間である。
そのため多少は遠慮して扉をノックしたのだが…
「は〜い、誰さ〜?」
明るいと言うか、気の抜けると言うか……そんな声で応じたのはコムイではなく、ラビだった。
「なんだ、ラビか。おはよう、ラビ。早いのね?」
にこ、と微笑みかけると、わずかに頬を紅潮させたラビ。
今のやり取りのどこに紅潮させるようなことがあったのか。
「コムイさん、いる?」
「え?あぁ、いるさ。寝てるけど」
ラビが体を半分寄せたので、そこからちらりと覗いてみると、疲れた顔をしたコムイがソファーで眠っていた。
「………そっかぁ…。そうだよねー。じゃあまた後でくる」
さっと体を翻し、その場から立ち去ろうとしたのだが、ラビに腕を掴まれる。
バッと振り返ると、意外にラビの顔が近くにあり、驚いてバランスを崩したところをラビに受け止められた。
「――…ッ…///はな、してっ…!!」
「あ?おい、ンな暴れんなさっ。わかったわかった、離すから。
…………んで、コムイになんか用さ?」
せっかく手を離してもらえたのに、なぜかまたラビの腕の中に閉じ込められてしまった。
背中がラビにくっついているので、うまく抜け出すこともできない。
仕方なく、じっとりとした目線でラビを見上げた。
ラビはと言えば、
「お?やっと大人しくなったさー?」
などとへらへら笑っている。
「………もー…」
抵抗するのにも疲れ、諦めてコムイのもとに来た理由を説明しようとしたところ、
―カタンッ――
何かが落ちる音で、視線をラビからその音がしたほうへ向けた。
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