恋ノ唄

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「…………ん、……」

―――ふと、目が覚めた。
誰かに抱き着いて、そのまま寝てしまったらしい。

その『誰か』を確かめようとして、顔をあげる。


「あ……ら、び……?」

寝起きで、舌が上手く回らない。
それでも、未だぼんやりする視界の中に綺麗な赤い色が飛び込んできて、それがラビだと思い出した。


それを思い出した途端、一瞬で目が覚めた。

瞬間、ラビから離れ、頭の中で何があったのかを思い出し、整理する。


――ラビがお昼に誘いにきて、それからいきなり抱きしめられた。
……そのあとは、あまりよく覚えていない。
何か恥ずかしいような、自分には信じられないようなことを口走ってしまった気はするのだが。
それが何だったのかまで思い出せない。


―ということは、その後すぐに眠ってしまったのだろう。


自分を、殴りたくなった。
なんであんなヤツに抱き着いて寝てたんだ。


でも、誰かの傍で寝たのはとにかく久しぶりだった。


「おい、春花…?」


「……ホント、こんなの久しぶり………」


「…何がさ?」


「あー、ううん、気にしないで。
―それより、あたしホントに寝てた……?」


さっきのことが信じられなくて、念のためラビに確認する。

……確認するまでもないのだろうけど。


「…うん、まぁ…な」


最悪だ。
よりによってラビの前で寝るとは。

弱みや、隙を見せるようなことはしたくなかった。


―それなのに、なぜかラビにはどことなく安心させてくれる雰囲気があって。


………何を考えているのだろうか。
春花にとって、信用できるのは唯一自分だけで、その自分すらもギリギリなのかもしれなかった。

―それなのに。


「春花の寝顔、スゲーかわいかったさ♪」

満足げに笑うラビに少しほっとしている自分がいた。










(いつの間にか、)

(彼と自分を)

(重ねて見ていたのかもしれない。)
 

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