恋ノ唄

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「とりあえずさ、」


「なに」


やはりさっきのことが信じられなくて、黙ってラビの顔を見つめていた。

そんな沈黙に堪えられなくなったのか、ラビから口を開いた。


「メシ食いに行こーぜ」


「……うん」

「そうと決まればー、さ、行くぞ」



笑顔で差し出された手に、自分の手を無意識に重ねてから、なんでこんな簡単に手を出してしまったのか、と思った。

そして、即座に引っ込めようと思ったのにその手はラビに握られ、仕方なく握り返す。


ちらりとラビの顔を見ると、はにかんだように笑うラビがいて。
なんだかこっちまでつられてしまう気がした。



+++


「んー…今日は何にするかなー。春花は何食いたい?」


手を繋いだまま、食堂まで来てしまった。

昼時は過ぎているため、あまり人とは会わなかったものの恥ずかしいことには変わりない。

何度か手を離そうと思ったが、どう考えてもラビが離してくれなそうだったので、諦めた。



「……何があるかわかんないもん。ラビと同じのでいいよ」


考えるのが面倒になったので、適当にラビに任せておいた。

「じゃあ……そうさね、俺肉食いたい気分だから今日はハンバーグにでもすっかな。
ハンバーグ二つ、お願いさ〜」


ラビが厨房に向かって声をかけると出てきたのは、薄い紫のような淡いピンクのような色をした長い髪を後ろで二つに分けてみつあみをして………、

…………なんともコメントに困るような人だった。


しかし、ラビが頼んだ瞬間、すぐに料理が出てきた。

人は見た目ではないと真剣に思い知らされた気がする。


席につき、手を合わせてから目の前にあるハンバーグにナイフをいれた。



一口サイズに切り、口に放り込む。


「………あ、おいしい」

素直な感想を述べると、ラビが、

「だろー?ジェリーの料理はめちゃくちゃうまいんさ」


嬉しそうに笑って、次々とハンバーグを口の中に放り込んでいた。

…あの人、ジェリーさんっていうのか。

なんだか見た目と名前が一致しない気がしたが、それは言わないでおく。


きっとあの人はいい人なんだろう。
そして料理も上手い。


あまりにおいしくて、普段はそんなに食べないのに全部たいらげ、さらにデザートまで頼んでしまった。









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