恋ノ唄

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-コンコン

返事が返ってくる前にラビが扉を開ける。
……はたしてノックをした意味はあったのだろうか。


しかしコムイもあまり気にした様子ではないので、大して珍しいことでもないのだろう。


ソファーに座るとコムイが何枚かの紙を出してきた。



「君達にはカトルっていう村に行ってもらうよ。
なんでもカトル村は水不足の村らしいんだよね。
―――でもここ数ヶ月、色んな水源から水が溢れ出るように流れてくるんだって。
ファインダーの子もいくつかそういう場所を見たらしい」


「へー。
それって今まで塞がってた水源がいきなり開いたんじゃねーの??」


ラビの言葉に、コムイは意味ありげに微笑んで、そうだね、と言った。

「そうかもしれない。でも、もしかしたらイノセンスが原因かもしれない。
だから、君達二人に行ってほしいんだ。
あまりキツイ任務じゃないから春花ちゃんの体慣らしにも調度いいと思うよ」


「………はい」


「しゃーねぇな」


それぞれに返事をし、部屋から出ていく。
後ろ手にドアを閉めようとすると、後ろから声をかけられた。


「…君のイノセンス、名前はつけたかい?」


「………名前、」


イノセンスには自分で名前をつけるのだと、ラビが言っていた。

ちなみにラビのイノセンスは「鉄槌」というらしいが、なぜか本人は気にいらないという。

じゃあなんでその名前にしたのか、と聞いたら適当に笑ってごまかしていた。


「………決めましたよ」


「へぇ、早いね。どんな名前だい?」


机の上で手を組み、ニコニコと聞いてくる。
春花は人差し指を口に当て、

「秘密です」

一言。


「そっか、残念だな」


大して残念そうでもないような顔でコムイはそう言った。
それから、思い出したように


「あ、そうそう。
春花ちゃんに頼まれてた銃と刀、作っておいたよ」


その二つを取り出した。

ありがとうございます、と一言だけ言って、受け取る。


ズッシリとした重量感。
それでも、その重さがひどく懐かしく思えた。



「初任務、頑張ってね」


「はい……!」


今度こそ、部屋から出た。

道を曲がるとラビが待ちくたびれたような顔をして、でもいつもと同じ笑顔で、

「あんま気張んなさ」


そう言ってくれた。











(これから行くところが、)

(命をかける場所。)

(怖くないワケではないけれど、)
 

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