恋ノ唄

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冷房がきかず、蒸し暑い列車に揺られながら、春花はふと考えた。


「(……カトル村…どんなところなんだろう…)」



コムイに渡された資料をぱらぱらとめくってみるが、特筆すべき事はとくにないようで、本当に小さな村らしかった。


知識の豊富なラビですら名前を聞いたことがあるだけでそのほかは何も知らないと言っていた。


………本当に小さな村なのだろう。

もしくは秘密主義なのだろうか。
自分で考えて、それはないな、と苦笑する。

昨日、地形などは把握していたほうがいいと思い自分なりに調べてみたのだが、やはり何もわからなかった。


「………春花?そんな難しそうな顔してどうしたんさ?」


ラビが必死に笑いをこらえているように顔を押さえながら聞いてきた。


そんな笑われるような顔をしていたのか自分は。
そう思わなくもなかったが、とりあえず答えておく。


「………別に。
カトル村の地形は把握しておきたかったなーとか、どんな村なのかなーとか考えてただけ。
これからそこで戦うかもしれないわけだし、地形を少しだけでも把握しといた方が有利じゃない??
まぁ、相手にもよるんだけど」


「………お前、戦闘経験あるのか?」


「あー…うん、まぁ……」


我ながら、なんとも怪しい…というか歯切れの悪い受け答えをしてしまったと思う。


これだと変に探られる気がする。

「…お前、なn「ストップ」

ラビの口を塞いで、無理矢理セリフを打ち切った。



……なぜかラビの顔が紅くなった。

口を塞がれて顔を紅くするなんて変態かコイツは。


じろりとラビを見ると、目線が少しおかしい。
一点に集中したかと思えば、すいっと目が泳ぐ。


その目線を辿ってみると、ラビの目は春花の胸元に行っていた。



そういえば、あまりにも蒸し暑いので団服の胸元を開けていたことを今更思い出す。

ラビの口を塞ぐために前屈みになったことで見えてしまっていたらしい。



即座にラビから離れ、団服のジッパーを上まで上げる。


…しばらくしてやっぱり暑くなり、少し下げた。
「……あたしのことは、いずれ話すから、今は聞かないで」

「りょーかいさぁ」


ふにゃりと笑うラビの顔は未だに紅い。

なんとなくむかついたので、

「散歩してくる」


一言だけ残して部屋(列車でも部屋と言うのか?)を出た。










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