恋ノ唄
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「………」
「………」
先程のことのせいかなんとなく気まずい雰囲気になり、二人共ぼんやり外を見ていた。
「(……なんでこんな気まずくなってんの。
さっきのことなんて気にしなきゃいいのに。
いつもなら気にするようなことでもないんだし…。
……でもこっちから話しかけるのもなんか気にくわないし)」
結局、自分は意外とわがままなのかもしれない。
お互いにどこか遠慮していて、なにをどう切り出せばいいのか判らないでいる―――そんな雰囲気だった。
「…………はぁ……」
小さくため息をつき、ラビにちらりと目をやる。
そこには静かに寝息をたてていつの間にか眠っているラビの姿があった。
静かだと思ったのは寝ていたからなのか。
それでもついまじまじと観察してしまう。
「(睫毛長い……
こうしてみれば結構カッコイイ……?)」
少し腰を上げて、前屈みになっていたのが悪かった。
駅に着いたのかブレーキがかかったため、重心は前へ傾き、
「っ、わ…っ…―!」
当然春花の体はラビの方へと倒れ込む。
その衝撃で起きたラビ。
当然といえば当然なのだが。
「………どうしたいきなり…」
寝起きの舌足らずな口調。
まだ眠たそうな伏し目がちの瞳。
それに加え、至近距離でラビの整った顔を見ることになり、慌てて飛びのこうとしたのだが――
「……まだここにいれば、いいだ、ろ……」
完全に目が覚めていないためか、背中に腕を回され身動きがとれなくなる。
「―…ちょ、ラビっ…//
離し、て………っ…―」
力一杯ラビの胸を押すが、やはりラビの力の方が強く、腕は外れなかった。
諦めようかとも思ったが、ラビが起きるまで―もしくは目的地に着くまで、周囲の人々から浴びせられる視線には堪えられない。
無理矢理ラビの腕を解き、それからなんとなく隣に座った。
「…………ぁ、」
ぽつりと声を漏らして、自分の胸に手をやる。
-とくんとくんとくん
小気味よいリズムを刻んではいるものの、いつもより確実にはやい。
顔も、なんとなくなく熱い気がする。
ぽすん、とラビの肩に頭をのせ、目を閉じた。
規則正しい寝息と、上下する体。
ラビの寝息に合わせて呼吸をしていると、睡魔が襲ってきた。
流れに身を任せ、春花も少しの間眠ることにした。
(どきどき、)
(鼓動がはやいのは)
(びっくりしただけだよ、きっと。)