恋ノ唄
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―今どこだ。
ガタン、と大きく揺れた衝撃で目が覚めた。
アナウンスを聞いていると、どうやら目的の駅を二つほど過ぎてしまったらしい。
しかし、寝起きの頭ではフル回転できず、どこかのろのろとした動きで周囲を見渡す。
窓から視線を移すと、視界の端に何か黒いものを捉えた。
そういえば眠る前は、不機嫌そうに次々と移り変わる景色を眺めていた春花が正面にいた…はず。
その彼女がそこにいないということは隣にいるのがその彼女なのだろう。
ラビの肩に頭をのせ、気持ち良さげに眠っている。
「…………やべ、」
なんかすっげーかわいい。
睫毛は長いし色は白いし。
同じ人間かこれ?
「あー……」
意味不明な声を漏らし、ゆっくり春花から目を逸らした。
なんとなく、このまま見ていてはいけない気がしたから。
ちらりと窓の外に目をやって、今すぐにでも降りなければならないことを思い出す。
―そういえば、目的の駅を二つも過ぎていた…!!
焦りからか、瞬間的に思考がはっきりし、立ち上がった。
そのせいでラビの肩に頭をのせていた春花は側頭部をひじ掛けにぶつけ、仏頂面で体を起こす。
苦笑しながら手を伸ばし、春花に駅を通り過ぎてしまったことを伝える。
春花は一瞬きょとんとした顔をして、それから焦りと不安が入り混じったような困惑気味の表情を浮かべた。
「とりあえず一回降りて、もっかい戻るしかねーさ。
荷物持って降りるぞ。」
何も言わなかったが、無言で頷いたのを見て春花を先に行かせ、忘れ物がないかざっと確認してから自分も降りた。
今回、ファインダーは現地で合流するらしく、ラビ達にはついていない。
……どうりで寝過ごすはずだ。
目的地までいける電車を探そうとして、
「……そういえば、」
ふと思い出した。
「俺のイノセンス使えばすぐ行けるんじゃね?」
一人で納得し、先を行く春花に声をかける。
「なー春花、ちょっとこっちきて」
「なに?」
「わざわざ電車待たなくてもさ、俺のイノセンス使えば電車に乗るより早く目的地に着くんさ」
「へー」
どこか薄い返事をされ、少し悲しくなったがとりあえず一旦駅から出、人気のない場所を探した。
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