恋ノ唄

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「……やぁっと着いた…!」


地面に足をつき、感触を確かめる。


ラビはいつもあんなので移動しているのだろうか。

…まぁ、もう関係ないけれど。

もう乗りたくない。


というか乗らない。
固く決心し、視線を前に向けると、少し先に小さな人影が見えた。


「ラビ、あれ誰」



黒い服を着て、こちらに向かって歩いてくる人影。


背丈からして多分男。

ラビも目を細めてその人物を見ている。


あ、と小さく呟いてラビがその人に手を振った。


「春花っ、あれが神田ユウさ!
いつも仏頂面でとっつきにくいけどいいヤツさ」


「へぇ」


そんな話をしているうちに神田がすぐ近くまで来ていた。


春花を睨むかのような目(もとからかもしれないが)で見てくる。


そして、さらに一瞥して小さくため息をつかれた。



半ばむっとしながらも手を差し出し、笑顔を向けたが、


「オイ兎。コイツなんだ」


握手を求めたのだが、物扱いされてしまうとは。


しばらく右手は出していたが、なんとなく所在なさげだったので引っ込めた。


「あ、コイツは新しいエクソシストで、」


ラビがこっちを気にしながらあたふたと説明をしようとしたのだが、最初の一言を言ったところで鼻で笑われた。


「コイツがか?
こんなモヤシみてーな奴がアクマ退治なんてできんのかよ?」


腹は立ったが、まぁ嫌味で返すだけにしておこう。
そう思い、にっこりと笑顔をつくった。



「こんにちは、神田さん。
モヤシみたいで悪いですけど、エクソシストやらせてもらいます。
失礼ですが女性の方ですよね。
背が高くてうらやましいです。ユウ、なんて名前もステキですね?」


あえて、疑問符は使わない。
身長、声からして男なのだろうが多分本人が気にしていそうな女顔の部分を嫌味で使わせてもらった。


案の定、

「………あぁ?
誰が女だ。
俺はれっきとした男だ…。
テメェは六幻のサビにしてやるっ!」


神田はキレた。

しかしそれも春花の想定内なのか、さっきまでの笑顔とは違い、してやったりという顔をしている。

「べつにお互い様じゃないですか?
あなたはさっきあたしのことを『コイツなんだ』ってラビに言いましたよね。
だからあたしもわざと女性と間違えただけです」


早口でそれだけ言って、刀に手をかける神田の手を押さえた。


「挨拶もなしに刀抜くなんて非常識もいいとこですよ、神田さん」














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