恋ノ唄
□28
1ページ/2ページ
「春花、つきましたよ、春花ー?」
「ん……?」
体を揺すられて目を覚ますと、目の前にはアレンのどアップ。
思わず身体を引くと、ひじ掛けに後頭部をしたたかに打ち付けた。
「…い"っ…〜〜〜っ!!」
-ジリリリ
頭を押さえてうずくまっていると、突然ベルが鳴った。
「あっ、ごめん春花!!
失礼します!」
「へ?きゃあっ」
いきなり浮いた身体。
一瞬暴れたが、
「おとなしくしてください」
耳元で囁かれ(多分アレン本人は何も考えずに)、仕方なく黙る。
アレンが春花を抱えながらも走ってくれたおかげで、なんとか電車が走り出す前に降りることができた。
「あ、ありがとう………
ちゃんと荷物も全部持ってきてるし…。
アレンって力あるんだね」
「一応毎日鍛えてますから」
ニコッ、と効果音がつきそうな笑顔のアレン。
その息は一つも乱れていない。
毎日鍛えているというのは間違いないだろう。
「…あたしも頑張ろ……」
密かにそう誓った。
―――
「………ねぇ、ホントにここ、入るの……?」
震える声。
目の前にあるのは大きな森。
足元には―――
-カサカサッ
「いやぁぁああっ!!
虫っ、虫がそこにっ……!!
あたし虫はムリなのっ、」
わらわらとどこかから湧き出てきているかのような虫の数。
虫が嫌いな春花にとって、この森は地獄にも値する。
「……でも報告があった村はこの森を抜けた先にあるらしいですし……」
「なんでーっ!?
なんで南米の中心部ともいえる都市がこんな森の奥にあるの!?」
「…チッ………うるせぇ」
「うっ………で、でも嫌いなんだもん……」
心なしか後ずさる春花の腕を、アレンが掴む。
泣きそうな顔で、春花はアレンを見た。
「この森はそんなに大きいワケじゃありませんし、僕が春花のことを連れていきましょうか?」
「………どうやって…?」
「え?抱き抱えてですけど?」
「いいい、いいっ!!
じ、自分で歩くっ!!
けど、あたし目つぶって歩くから、アレンの腕に掴まっていい?」
「…僕はいいですけど………春花はそれで大丈夫なんですか?」
うん、と春花は小さく頷いて、アレンの腕にぎゅっと掴まり、目を閉じた。
そして、
「「せーのっ」」
二人同時に足を踏み入れた。
-ガサガサッ
「〜〜〜〜〜っ!?!?!?」
「っわ、///」
目を閉じてもやっぱり感覚はあって。
ブーツを履いていても、虫がそこら中を這っている気配がある。
「う〜〜〜〜っ……気持ち悪いぃぃい………(泣)」
「あとちょっとですよ。
頑張りましょう」
「…………うん…」
とは言え、見えない状態とは怖いものだ。
この場合は虫を見たくないがために目をつぶっているのだが。
(……ラビがいたら、あの鉄槌でひとっ飛びできたかなぁ…)
そんなことを頭のスミで考えてしまい、慌てて首を横に振った。
.