恋ノ唄

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「春花、つきましたよ、春花ー?」



「ん……?」


体を揺すられて目を覚ますと、目の前にはアレンのどアップ。

思わず身体を引くと、ひじ掛けに後頭部をしたたかに打ち付けた。



「…い"っ…〜〜〜っ!!」


-ジリリリ



頭を押さえてうずくまっていると、突然ベルが鳴った。


「あっ、ごめん春花!!

失礼します!」



「へ?きゃあっ」


いきなり浮いた身体。

一瞬暴れたが、

「おとなしくしてください」


耳元で囁かれ(多分アレン本人は何も考えずに)、仕方なく黙る。



アレンが春花を抱えながらも走ってくれたおかげで、なんとか電車が走り出す前に降りることができた。


「あ、ありがとう………


ちゃんと荷物も全部持ってきてるし…。

アレンって力あるんだね」



「一応毎日鍛えてますから」


ニコッ、と効果音がつきそうな笑顔のアレン。

その息は一つも乱れていない。


毎日鍛えているというのは間違いないだろう。


「…あたしも頑張ろ……」



密かにそう誓った。





―――



「………ねぇ、ホントにここ、入るの……?」


震える声。

目の前にあるのは大きな森。


足元には―――




-カサカサッ


「いやぁぁああっ!!

虫っ、虫がそこにっ……!!


あたし虫はムリなのっ、」



わらわらとどこかから湧き出てきているかのような虫の数。

虫が嫌いな春花にとって、この森は地獄にも値する。



「……でも報告があった村はこの森を抜けた先にあるらしいですし……」


「なんでーっ!?

なんで南米の中心部ともいえる都市がこんな森の奥にあるの!?」



「…チッ………うるせぇ」


「うっ………で、でも嫌いなんだもん……」



心なしか後ずさる春花の腕を、アレンが掴む。

泣きそうな顔で、春花はアレンを見た。



「この森はそんなに大きいワケじゃありませんし、僕が春花のことを連れていきましょうか?」


「………どうやって…?」


「え?抱き抱えてですけど?」


「いいい、いいっ!!
じ、自分で歩くっ!!
けど、あたし目つぶって歩くから、アレンの腕に掴まっていい?」


「…僕はいいですけど………春花はそれで大丈夫なんですか?」


うん、と春花は小さく頷いて、アレンの腕にぎゅっと掴まり、目を閉じた。



そして、

「「せーのっ」」


二人同時に足を踏み入れた。



-ガサガサッ


「〜〜〜〜〜っ!?!?!?」



「っわ、///」


目を閉じてもやっぱり感覚はあって。

ブーツを履いていても、虫がそこら中を這っている気配がある。



「う〜〜〜〜っ……気持ち悪いぃぃい………(泣)」


「あとちょっとですよ。

頑張りましょう」



「…………うん…」



とは言え、見えない状態とは怖いものだ。

この場合は虫を見たくないがために目をつぶっているのだが。



(……ラビがいたら、あの鉄槌でひとっ飛びできたかなぁ…)



そんなことを頭のスミで考えてしまい、慌てて首を横に振った。












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