君に捧ぐ純情(短編)

□あなたならかまわない
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「へ〜じゃあ、付き合って結構長いんですね!」


「え、うん。まぁ…。」


「やっぱり年下ですか?」


「…4つ下だ。」


どうやら教授の研究室で恋愛について熱く語っていたらしい女子に、オレは何故か見事に捕まった。

女子がその気になると本当に怖い。

有無を言わせずに室内へ引っ張り込まれる強さは並みじゃなかった。

だからオレは観念して可能な限りの質問に答えることにした。


(ある程度話せば、満足して解放してくれるだろう。)


言うなれば早くこの場から逃げ出したかったのだ。



「先生は恋人と、どのくらい会ってますか?」



今まで淡々と質問に答えていたのに、この質問にオレは動きを止めた。

そういえば、最後に会ったのは何時だろう?

一緒に住んでいるとはいえ、忙しくなれば帰って来ない日の方が多い。

今までちゃんと考えた事なかったけど、オレ達の会う頻度って…どのくらいなんだろう?


「先生?」


突然黙り込んだオレに質問した生徒が声をかける。

オレは考え事に浸っていた頭を切り替えて、今思うまま正直に答えた。


「えーっと。下手すれば1〜2週間会えないのは当たり前かな。」


「え〜!?」


さらりと答えたオレだったが、質問した生徒からは驚きの声が聞こえた。


「じゃあその時間をカバーできるくらいの、甘い言葉は言ってあげてるんですか?」


「え…そ、そういうのは苦手で…全然。」


軽い気持ちで言ったら意外に真面目な質問を返されて焦った。

頻繁に会える時だって、オレから言うなんて事はない。

そんなオレに女子生徒は眉を寄せて言う。


「もしかして、告白は相手からですか?」


「…そうだな。」


不穏な空気に若干逃げ腰気味で言うと、今度こそ生徒は凄い剣幕で怒鳴った。


「ダメですよ!安心させてあげなくちゃ!!
好きになってもらった事に胡坐をかいてたら、いつか相手が離れて行っちゃいますよ!」


その言葉に思いあたる事が多すぎて固まった。








もしかしてオレ…
野分を不安にさせてた?

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