君に捧ぐ純情(長編)
□YOU&I
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何機目かになる飛行機を、空港の大きなガラス窓から見送った。
昔は無邪気に指で追いかけていただけの機体を、大人になってからは追いかけるのではなく離れる為に使った。
頭上の大きな掲示板を見上げれば、東京から出る便がズラリと並んでビッシリ埋めている。
自分の搭乗する大阪行きの便の欄を何となく見上げながら、未だ他人事の様に思っているけれど…
手に持っている荷物の重みが現実だと告げている。
(…重いな…。)
手荷物の中にはお気に入りの本が何冊か入っており、服よりも重さがあるけど多分その重みじゃない。
今一番重いのは心だろうか
野分の幸せを願う感情と、まだ野分に想われていたいと願う感情が心の中で混ざり合って痛い。
何気なくゲートを見れば、昔アメリカから帰国した野分を蹴り飛ばしたことを思い出して笑った。
あの頃はお互いに必死で
空回ってばかりの不器用な恋だった
たくさん泣いて恥ずかしい事を叫んで、見っとも無い醜態を晒した
でも想い合えていた
想えばそれだけ返してくれてた
そこにはオレを包む優しさがあり、拙いながらに一生懸命言葉を紡いで…
どれだけ見っとも無くても
こんなオレを好きでいてくれてた野分
大きく違うのはそこだ
(今は…そんな事も、野分にとっては過去なんだな。)
だけどオレの中では
今も息づいている
綺麗で鮮明な淡い想いを
一生忘れることなんかない
短い出張から帰宅してから
1日1日がとても儚く感じた
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