君に捧ぐ純情(短編)

□パーフェクトライフ
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春の終わり、夏に差し掛かる一歩手前の梅雨の途中





明日には帰れると野分からメールが入ったので、仕事帰りに近くのスーパーに寄ろうと人混みを移動中不意に考える。

空を見上げると最近連続していた雨の中休みの様に、久しぶりの太陽がアスファルトを照らしている。

もうすぐ梅雨が明ける

漸くこの鬱陶しい季節が終わるかと思えば、今度は夏がやってくる。


(まぁ梅雨よりはマシか…。)


別に誰にも言った事はないが、実は梅雨が嫌いだったりする。

何故かというと湿気で寝起き後の頭が酷い事になるからで、特別な理由ではないにしろ自分には切実な問題だ。

梅雨だからといって教師として髪の跳ねた頭で行く訳にはいかないし、かといって早起きは得意ではない。

そんな訳で寝癖と格闘する毎朝が続き、そのイライラが表情に出ているのか生徒たちが益々遠ざかる。

そんな悪循環がまだしばらく続くかと思うと気が重くなる。


『ヒロさんは寝癖も可愛いですv』


「………。」


重くなっている気分の時に以前野分から言われた言葉が浮かび、歩きながらも眉間に皺が寄る。


(寝癖に可愛いも何もないだろうが!!)


何をどうしたら寝癖が可愛いなんて考えになるのか…

そんな事を考えていたら前方に薬局が見えて、大きな文字が視界に飛び込んで来た。


“あなたに足りないモノを補うシャンプー”


薬局の前には数人のカゴを持った売り子達が、恐らくシャンプーの試供品だろうものを人々に配り歩いている。

その光景を横目で見ながら薬局前を通り過ぎる。


(だったらこの寝癖を打破する成分が配合されてるシャンプーが欲しいところだ。)


そんなありもしないモノを心の中で求めながら歩いていたら、下がり気味の視界に影が落ちた。


「どうぞ、試供品です。」


薬局は通り過ぎたと思っていたのに、少し離れたところでも試供品を配っているようだ。

何も考えず咄嗟に受け取ってしまい、後悔したが遅く配布人は別の場所へと移動していた。


(っていうか…売り文句的に女子向けシャンプーなんじゃ…??)


試供品のパッケージを見てもシャンプー名称は普通だが“おまじない”的な文字が端に引っ付いている。

裏を返せば男女共用シャンプーと書かれているので問題はなさそうだが…


“あなたに足りないモノを補うシャンプー”


「………。」


しばらくパッケージと睨めっこしていたが、まぁいいかと気にしない事にしてスーパーへ急いだ。


しかしオレはこの時気が付いていなかった

シャンプー名の横に
小さな字で書かれていた文字に



【アナタの魅力を引き出す香り】







男女共用シャンプー

○リット的なモノだと思ってください(笑


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