君に捧ぐ純情(短編)

□love me,l love you
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「お前のいい所は、一言で言えば悩み事のなさそうな曇りのない笑顔だ。
とても俺には出せないパワーというか目に見えないオーラを放ってる。」


そういう風な事を以前先輩に言われた事がある。

でもね、先輩

「悩み事なさそうな人」=「悩み事の無い人」ではない訳で

実は俺にも最近とても悩んでいる事があるんです


話は数日前に遡る


久々に俺とヒロさんの休日が重なった日曜日。

俺としては何処か出掛けようかと思ったのだがヒロさんの都合がそれを許さなかった。

「見たいDVDがあるし、新刊も買ったから特に外には用事がない。」


俺としてもヒロさんと一緒に居られればいいので、外出取り消しに異論はなかった。


(普段「休んで」と言っても聞いてくれない人だし、良い機会なので今日はゆっくりしてもらおう。)


そういう訳で外に行くのを諦め、朝から一緒にリビングのテレビの前に腰を下ろした。

起きてすぐにお風呂に入ったらしいヒロさんは、若干濡れたままの髪にタオルを被ったままだった。

隣をチラリと見ればDVDを操作している彼が異常に眩しく見えて、おまけに良い香りまでしてくる。


(ここで手を出したら間違いなく殴られるから我慢しよう…。)


ヒロさんの指先が再生ボタンを押し、内容が始まったら漸く乱暴に髪を拭いた。

内容はヒロさんが普段見ない恋愛系の邦画で、何か引っ掛かるのか所々で眉を寄せていた。

黙って見ていたら隣から無数の独り言が聞こえてくるが、こういう時返事をしてはいけない。

ヒロさんはそれを声に出しているという自覚がなく、知ったら物凄く恥ずかしがってとばっちりがくる。

だから可愛いなぁと思いつつも黙って画面を見ていると、恋愛でのお決まりなシーンがきた。

主人公の女性が相手にされないと判っていても、想い人と肌を重ねるシーンだった。

俺はただ傍観していたのだが、ヒロさんの思いも寄らない一言が心に多大なダメージを与えた。


「まぁ、心が得られないなら身体だけでも…そういう考えが判るような気もするけど…。」




画面を見るヒロさんの目は真剣で、その言葉には実感が篭っている気配がひしひしと伝わってきた。

俺は彼を数秒見つめたまま硬直した。

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