君に捧ぐ純情(長編)

□恋じゃなくなる日
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「よーし、全員集まったな?さっきの話だが、普通に決めたんじゃ面白くない!
そこでだ!俺に提案がある。」


周囲が少しざわめいたが、声を上げた人物は構わずに続ける。


「ターゲットは……。」




****




「上條弘樹さん!俺と付き合ってください!」


「…………。」


これで今月一体何人目だろう?

頭が痛くなる。

別にオレは恋がしたいとか思っていないし、むしろそんな事に時間を割くなら少しでも勉強したい。

習い事だって色々してるし、オレにとって恋愛は正直言って負担でしかない。

今まで誰かと一度も付き合った事はないが、特に興味もないし相手が欲しいとも思わない。


「あの…あんた誰?」


その前に名前も知らない奴と付き合うほど、オレはお人よしじゃない。

とりあえず話をするなら名を名乗れ。


「あ、すいません言い忘れて。俺、進学科の津森っていいます。」


相手はこちらの指摘を軽く受け止めて、ヘラっとした胡散臭い笑顔で答えた。


(こいつ知ってる…確か、物凄くいい加減で有名だ。)


そんな奴の告白なんて益々信用できない。

絶対に何かの勢いとか気分とか、そういうもので行動できる奴だから尚更だ。


「…悪いけど、今そんな暇ないんで。」


「あ、ちょっと!!」


オレは簡単な断りだけを返して足早にその場を去ろうとしたが、諦め悪く彼はついて来る。


「そんな事言わないでさ〜俺と付き合ったら絶対に楽しいって!」


津森はしつこく横に並んで追いかけて来て、尚もそんな事を言うもんだから仕方なく言った。


「しつこいんだよっ!!」


言葉と一緒に睨みを利かせると、相手はきょとんと驚いた表情をして足を止めた。

オレはそのまま振り返りもせずに歩いた。


「…結構手強そうかも。」




今まで何度かこんな事はあったが、今月に入ってから更に酷い。

ここは共学なはずなのに、何の冗談なのか何故か男からも告白を受ける。


(何故だ……。)


オレは頭を抱えながら再び校庭を歩き出した。



「あの、上條弘樹さん。」



遠くから遠慮がちに声をかけられて、オレは内心またか…と思いつつ後ろを振り返った。

そこに居たのは驚くぐらい背の高い奴だった。


「…何か用?」


まだこいつの目的が告白と決まった訳じゃないが、さっきの事が頭から抜けなくてついキツイ言い方になる。

しかし相手はそんなオレの態度にも怯まず、大声でとんでもない事を言う。




「俺、草間野分っていいます!あの…俺と付き合ってくださいっ!!」





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