君に捧ぐ純情(長編)
□恋じゃなくなる日
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「よーし、全員集まったな?さっきの話だが、普通に決めたんじゃ面白くない!
そこでだ!俺に提案がある。」
周囲が少しざわめいたが、声を上げた人物は構わずに続ける。
「ターゲットは……。」
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「上條弘樹さん!俺と付き合ってください!」
「…………。」
これで今月一体何人目だろう?
頭が痛くなる。
別にオレは恋がしたいとか思っていないし、むしろそんな事に時間を割くなら少しでも勉強したい。
習い事だって色々してるし、オレにとって恋愛は正直言って負担でしかない。
今まで誰かと一度も付き合った事はないが、特に興味もないし相手が欲しいとも思わない。
「あの…あんた誰?」
その前に名前も知らない奴と付き合うほど、オレはお人よしじゃない。
とりあえず話をするなら名を名乗れ。
「あ、すいません言い忘れて。俺、進学科の津森っていいます。」
相手はこちらの指摘を軽く受け止めて、ヘラっとした胡散臭い笑顔で答えた。
(こいつ知ってる…確か、物凄くいい加減で有名だ。)
そんな奴の告白なんて益々信用できない。
絶対に何かの勢いとか気分とか、そういうもので行動できる奴だから尚更だ。
「…悪いけど、今そんな暇ないんで。」
「あ、ちょっと!!」
オレは簡単な断りだけを返して足早にその場を去ろうとしたが、諦め悪く彼はついて来る。
「そんな事言わないでさ〜俺と付き合ったら絶対に楽しいって!」
津森はしつこく横に並んで追いかけて来て、尚もそんな事を言うもんだから仕方なく言った。
「しつこいんだよっ!!」
言葉と一緒に睨みを利かせると、相手はきょとんと驚いた表情をして足を止めた。
オレはそのまま振り返りもせずに歩いた。
「…結構手強そうかも。」
今まで何度かこんな事はあったが、今月に入ってから更に酷い。
ここは共学なはずなのに、何の冗談なのか何故か男からも告白を受ける。
(何故だ……。)
オレは頭を抱えながら再び校庭を歩き出した。
「あの、上條弘樹さん。」
遠くから遠慮がちに声をかけられて、オレは内心またか…と思いつつ後ろを振り返った。
そこに居たのは驚くぐらい背の高い奴だった。
「…何か用?」
まだこいつの目的が告白と決まった訳じゃないが、さっきの事が頭から抜けなくてついキツイ言い方になる。
しかし相手はそんなオレの態度にも怯まず、大声でとんでもない事を言う。
「俺、草間野分っていいます!あの…俺と付き合ってくださいっ!!」
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