treasureV
□□■summer vacation■□ 伊達政宗
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真夏の強い陽差しが茜色の空に溶け、夕暮れ時の風が心地好く頬を撫でる頃───
短い休暇を楽しむ為に訪れた、南国のリゾートホテル。
広々としたプールサイドに腰かけ、足を浸して慣らしながら水に飛び込む。
「あの、政宗様…」
「どうした?…もしかして、泳げないのか」
「い、いえ…!」
ザバッと水から顔を出し、問い掛けると──
ちーはふるふると首を横に振り、水着の胸元を隠すように両手を交差させていた。
(違うな…照れているようだ)
こちらの方が恥ずかしくなるほど初々しい態度に、じわりと頬が熱くなる。
「…俺は適当に泳いでいるから、ゆっくりしているといい」
「っ…はい…すみません」
邪念を振り払うように泳ぎ出すと、少し躊躇っていたちーも水に入ってきた。
(…あまり、見ないようにしておいた方がいいだろう)
互いにそれとなく様子を窺いながら、付かず離れずの距離で泳いでいると──
「…ぷはっ」
ちーもリラックスした様子で、ゆったりと寛いだ表情を見せ始めていた。
(…よかった。ちーも楽しめているようだ)
海を見渡せるプライベートプールには、不思議な解放感がある。
(気持ちがいいな…)
潮の香りを感じながら水中を泳いで移動し、ちーのすぐ傍で顔を上げて声をかけた。
「なかなか上手だな」
「本当ですか?…久しぶりだし、ちゃんと泳げるか不安だったんですけど…」
「それと、その水着も…よく似合っている」
「政宗様…」
そっと抱きすくめると、濡れた肌にいつもと違う感覚を呼び覚まされて──
惹き寄せられるように唇を重ねると、ちーの唇から甘い吐息が溢れた。
「…っ、ん……」
まとめられていた髪をほどき、ゆっくりと梳いていくと、心地良さそうに瞳が伏せられる。
身動きする度に立つ水音と相成り、その表情はやけに扇情的で──
(…これ以上は、まずいかもしれない)
ちーを抱きしめたまま懸命に落ち着こうと、その肩口で深いため息をつく。
「……すまない」
「え…?」
「ちーが可愛い顔を見せるから、抑えが利かなくなりそうだ」
「!」
「勿論、部屋までは我慢するつもりだが」
「ま…政宗様、待ってください…っ」
「…分かっている、ここでは抱かない」
(…いくら2人きりとはいえ)
(さすがに──ここでこのまま、というほど解放的にはなれそうもない)
「ただ…あと少しだけ、こうしていてもいいだろうか」
「……ふふ、はい」
肩に触れた艶やかな髪を、そっと耳に掛けながら抑えた声で囁いた。
ゆるく腰に腕を回すと、再び唇が触れ合う。
南国の蕩けそうな夕陽に照らし出された水面で、
甘い口づけを繰り返す音と、波のさざめきだけが響いていた──