treasure

□Garnet 『雪やまぬ夜二人』
3ページ/6ページ




桂木さんとの待ち合わせ場所。



クリスマスのイルミネーションが街のあちこちに飾られていて、見てるだけでも心が浮き足立ちそうになる。


昼間から降り出したままの雪は、相変わらず、チラチラと落ちてくるだけで、多分、積もりそうにないのかな?


でも、空を見上げるとどんどん、部厚い雲で覆われていく。

明日の朝には、もしかしたら、積もったらいいのにな…。



すると、



「ちぃ」


私の名前を呼ばれ、振り向く前に身体に回された、力強い腕。


暖かい桂木さんの腕の中。


「…待たせてしまったかな。」


ちょっと申し訳無さそうな、弱気な桂木さんの声。


そんな事、ないのに。


桂木さんの腕の中で、自分の身体を桂木さんの方に向け、桂木さんの胸に顔を寄せる。


桂木さんの香りが私を包み込む。


幸せだと思える瞬間。


「頬が、冷たくなってるな。」


桂木さんの指先が私の頬に触れる。


温かく柔らかい桂木さんの唇が、冷えた頬に触れた。



くすぐったいけど、桂木さんとこうして触れ合っていられる事がすごく嬉しくて。



「…桂木さん、大好き。」



その言葉を聞いた桂木さんの頬がみるみるうちに赤く染まっていく。



はぁぁと溜め息を付いた桂木さんが、私の手を繋いだ。



「…全く君は…。いつも、俺が嬉しくなるような言葉で俺を困らせる。」


だって、本当の事だもの。


嘘を付いたって、仕方ないでしょ?


「…手冷たいな。」


そう言って、桂木さんがポケットから手袋を片方、渡してくる。



「ちぃ、右手にそれをはめてごらん。」


けれど、片方だけ?すると桂木さんは、自分の左手にその手袋をはめた。



「してない方の手は、こうするんだ。」


繋いだ手を、自分のコートのポケットに入れた。



暖かいな…。


たったこれだけの事でも、どれだけ自分が桂木さんに大切に思われているか、わかってきて。



嬉しくて、繋いだ手をキュッと握り締めた。








次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ