帽子屋さん2

□忘却の彼方の先の先
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『ユーリ?』


「ん?どうしたんだ」


『さっきから呼んでたのに、気づかなかったのはそっちでしょ?』



膨れたようにすねる彼女に、
悪いと短く謝る。
当然、そんなことでは許してくれる彼女ではない。



『ユーリ、ぼーっとしてるから聞き逃すんだよ。もう言ってあげないから』


「悪かったって」



そんなこと思ってないくせに。
と、彼女の顔は語る。



彼女はちょっとばかり、いやかなり根に持つタイプだから
こんな時はほっておくに限るのだが、
彼女が話した内容がわからないからどうしたらいいかわからない。



「悪かったって」


『ほんとに、そう思ってるの?』


「思ってる」



まだ疑ってるようだが、とりあえず話してはくれそうだ。



「で、何の話だったんだ?」


『…もういわないもん。子供っぽいって呆れられても、もういわないから。
 絶対言わないんだからねっ!』



本気で怒らせてしまったのだろうか。
否、彼女の気持ちの問題か。



この言い方だと、照れくさい。
といった感じだが。



「へぇ、ほんとにもう言わないのか?」


『…ユーリが同じこと言ったら言ってあげる』



ぷい、と顔をそらす。
そんなんだから子供っぽいんじゃねぇのか?
そういったらきっとまた拗ねてしまうだろう。



「…何が言いたいかだいたいわかった。だけどオレも言うつもりはないぜ?」


『何で?』


「お前が言ったら、オレも言ってやる」


『私、絶対言わないって言ったでしょ』


「なら、お互い言わないまんまだな」



お前が言いたいことなんて、すぐに分かった。



…きっとお互い、この喧嘩なんてすぐに忘れてしまうだろう。
そして、気が付いたら二人で笑い合って言うんだろうな。




ー忘却の彼方の先の先ー

(あなたのことが、大好き)




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