帽子屋さん2

□存在証明完了しました。
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「時々、思うことがあります」


『何を?』



そう聞くと、彼はそっと目を伏せた。
大抵、彼がこういう顔をするときは
自分が自分で受け入れられない時。
僅かに眉を下げ、寂しそうな目をする。



そういう変化に、気づいてあげられるようになった。
でも、それじゃあ足りないんだ。



不安にさせたくない。
不安になりたくない。


「……っ」


『いいよ、……話して?』


「はい」



今にも、泣きそうな顔。
揺れる瞳。



「…時々あなたを閉じこめておきたくなる
 誰にも触れさせない、みられない場所で」



いつもの敬語が抜け落ちた。
幼い子供のような独占欲。



そんな姿が可愛いなんて。



ー私も相当、毒されているんだなぁ。



「おかしい、ですよね」


『…そんなことないよ』


「…?」


『私のことを思ってくれてる、それだけで嬉しいから』



そう笑うと、
君も少し笑った。





ー存在証明完了しました。ー


(君がいて、私がいること)


  (それが全て)





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