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□狂気という愛をあげる
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狂気という愛をあげる


僕たちは生まれる前からずっと一緒だったよね

僕たちは二人で一人なんだ


冗談なんかじゃなく、僕は亮だけいればいいんだよ

世界が二人だけになればいいのになんて

そんな夢物語を本気で望むほど僕は子どもじゃないから


僕は亮だけを見て
亮は僕だけを見ればいい

それで十分

亮がいれば僕は何もいらないんだよ

もちろん亮もそう思ってるよね?



「淳、俺の話聞いてた?」


亮が僕以外を見ることなんて有り得ないよね
だから、サエと付き合うなんて聞き間違えだ

「ごめん、よく聞こえなかったや。
 もう一度言って?」

「仕方ないなぁ。だから、サエと付き合う事になったんだ」


聞き間違えじゃなかった
頭を鈍器で殴られた様な衝撃が走る


「…何で?」

「何でって、両思いだから」

「何で僕以外の奴を好きになるの?
 僕以外を見るなんて許さない」

僕は亮しか見ていないのに!

「…淳?」

亮が困った顔で僕を見てる

「わかった。嘘なんでしょ。
 そういうのはついちゃダメな嘘だよ、亮」

そうだよね、亮は僕がいないとダメなんだから
やっと発言の真意がわかったから、亮に微笑みかける

光に当たって艶のある髪に触れようと手を伸ばすと、かわされてしまった


「嘘なんかじゃない」

真剣な顔で僕を睨んでくる

「前から俺はサエが好きだったんだ。
 今日サエが告白してくれたんだよ」

恥ずかしげに少し頬を染めて、そう言う亮を見て本当なんだと確信した


その瞬間、今までにない位カッと体が熱くなって


目の前にいる亮の手首を掴んだ

「亮は僕だけのものでしょ
 勝手に他の奴の所に行くなんて許さない!」

感情が抑えられなくなって、つい声を荒げてしまう

亮が初めて僕に怯えるような目を向けてくる


「どうしたんだよ、淳!
 今日のお前変だぞ」

宥める様な笑顔を無理に浮かべて、掴んでいる手首を振り払おうとする仕草を見せた


「おかしいのは亮の方だよ
 僕らはお互いだけがいればいいのに」

僕たちは生まれるずっと前から一緒だったんだよ

だからこれからも一緒なんだよ


「ねぇ、亮。
 僕は亮を愛してるよ」

ごめんね、こんな愛し方しかできなくて


亮を組み敷いて、その白い首に手をかける

少しずつ力を込めていくと、亮の綺麗な顔が苦しそうに歪む

「…あ、つし」


「僕だけ見てよ。僕だけ」

目の前の瞳には僕だけが映っていて、嬉しくなる

瞳越しの僕が微笑んでる


亮はついに意識を手放した様で、ぐったりと力無く横たわっていて

首から手を離してその白い頬を撫でる


さて、これからどうしようか
鎖で繋いでみるとか

意識が戻った亮が僕から逃げなくなる方法を考えながら、僕は亮の涙を拭ってあげた



end

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