■最終日

達也先生とのお別れの日。
何気ない、いつもと同じ日だった。
授業が終わった達也先生と個別の教室に2人きりだった。

「達也先生ーー」
「何?どうしたの?」
「お願いがあるの」
「何?早く言って?」
「あたしの手にミサンガつけてほしいの。」
「あぁ〜いいよ」
そう言って赤と黒と緑のミサンガをあたしの左手に結んでくれた。
「先生にも1つあげるね」
「マジで!?舞が2つ付けたら!?!?」
「いや、達也先生には1つ持っててほしいの」
「分かった!!俺は仕事あるけんつけれないけど・・・??」
「いいよ持ってて」
そう言って達也先生とお別れをした。
泣きもしなければ
『今までありがとう』も言わなかった。
「まだ好きです』なんて思いつきもしなかった。
きっと心のどこかで甘えてた。
『もどってくればいつでも逢えるじゃん』
そう思ってた。
あたしは弱い仔だ・・・

あたしのポケットにまだ2つミサンガが残っていた。
「豊先生ーーー」
「何?」
「あたしの手にミサンガつけてw」
「あぁいいよっ。」
「先生も1つつけて?」
「ええ〜イヤだよ!」
「なぁぁんでぇぇぇぇ?せっかく2つ買ったのに・・・」

豊先生は机の横にあたしのあげたミサンガを飾ってくれた。
あたし手には2本のミサンガ。
達也先生とおそろ、
豊先生とおそろ、
どっちも大事に思えた。
比べようがナイくらいに・・・

あたしは最後の最後まで豊先生に
達也先生の愚痴とかノロケとか悩みとかしゃべってた。
そういう時間があたしは好きだった。
でもね、
昔は本当に達也先生の事思い出すだけで幸せで
口にするだけで照るような
そんな楽しい恋だった。
悩みながらでも好きで好きでどうしようもなくて、
あたしは盲目になってた。

今はなんか違う。
恋に恋してるだけで、
「話したいな」とか「一緒に居たいな」とか言いながら
いざ一緒に居ても楽しくない。

向こうが少しずつあたしを避けてるから?
そんな風に思ってたけど
今思えば
あたしの心はもう別の方へ向かってたんだ。

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