■突然

合格の打ち上げから3日もたたないうちに
あたしは「個別の生徒」になり受験前と何も変わらず自習に行くようになった。
達也先生と話す事はなくて
高校生になったあたしに対して興味もナイみたい。
そういうのには慣れてたから別にもう傷つきもしなかった。

達也先生と同期の涼二先生っていう先生が居る。
涼二先生はインストラクターから個別管理の仕事に変わっていた。
数学の質問に職員室に行くと涼二先生と豊先生が2人で仕事をしてた。
「先生、質問。」
その一言に豊先生は何の反応もなかった。
・・・一瞬とまどった。
そしたら涼二先生が
「持ってきてみよ」
って言って隣に座った。

あたしはもう集合の生徒じゃナイんだ。
“豊先生の生徒”じゃナイんだ。
あたしは涼二先生の解説なんて頭に入らなくて
ずっと豊先生を見つめてた。
あんなに仲良かったのにいつも一緒しゃべってたのに
もう「先生」って呼んでも振り向いてくれないの?

その日はいつもより早く帰った。
帰る時、豊先生に声をかけた。

「豊先生、移動になる?」
「さぁそれはどうやろっ」
「あたし、豊先生はA校に移動になる気がするw」
「・・・なんでよっいいやんA校。」
「本当にA校に行ったらおもしろいのになーー」

なんて言いながら笑って帰った。
何も変わらない。
あたしは欲しいモノが手に入った。
これからもこうして塾で騒いで勉強頑張って
楽しい高校生活の始まり。

帰りに窓越しに見た達也先生はちょっと疲れてるように思えて
なんだかイライラして見えた。

・・・こんな目の人だったかなぁ

いつの間に達也先生の笑顔見た時の
一瞬息が止まるみたいなあのトキメキなくなったんだろう
自分でもびっくりした


ねぇ
あたしねこの日の豊先生の笑ってあたしを見て
「塾好きやなあああ!」
って言ったのが忘れられないんだよ

[TOPへ]
[カスタマイズ]




©フォレストページ