■分かれ道

2月になって私立入試が始まった。
私立入試の3日前、達也先生と入試前に会う最後の日。

「先生、次会うのは入試終わった後だね。」
「本当やなぁ!頑張ってきよなぁ!」
「はいっ。頑張ってきます。」

そう言って帰った。
これが入試前の達也先生との最後の会話。



入試前日は希望者だけの前日特訓。
参加者は15人くらいだった。
あたしはもちろん最後まで授業を受けた。
最後の授業は豊先生だった。
9時半。
みんなが帰って教室に豊先生と2人だった。

「先生、最後に電流の問題教えて!!」
「いいよ〜。ちょっと待ってなっ。」

そう言ってキレイにした黒板に図を書いて説明してくれた。

「先生、あたし頑張ってくるけん!!」
「おゥw頑張ってきよなーー!!」
「じゃぁぁ、明日理科でいい点とれるように・・・。」

そう言ってあたしは先生の前に左手を出した。
先生はチョークで汚れた手であたしの手を握ってくれた。
でっかくて
あったかくて
力強くて
2人手をつないだまま廊下に出た。
階段を2人で降りた。

「あたし頑張れるよ♪」
「頑張ってきよな♪」

1階に下りると他の先生が居て2人手を離した。
何もなかったみたいに。

あたしは達也先生が「好き」だよ?
だけど豊先生の手のあったかさがあたしの心に届いた。
嬉しかった。
いろんな先生や友達みんな
   入試頑張って
って言うけど
ありふれた応援
決まり文句みたいで
だけど
豊先生が言った
   頑張ってきよな
って一言
本当に嬉しかった。
あたしが第一志望のクラスに合格できたのは
豊先生が居たからだ。

ありがとう。

これは寄り道?
それともあたしが進むべき本当の道?

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