「伸びたねぇ」
朝、鏡台の前で己の寝癖と葛藤していると、珍しく早起きしたのスリーピーがのしかかってきた。
「ちょっ…重いわ」
押し返してみるけど動く気配もないので諦めた。
「はぁ…何か用?」
「ん〜…用事がなきゃ、来ちゃだめ?」
せっかく戻りかけている髪を弄んでくる。
ムッときたものの寝起きの彼に何を言っても無駄なのは分かりきってるので、眉をひそめるにとどまる。
「別に駄目ではないけど…」
「けど〜?」
「そう抱きつかれたら何も出来ないわ」
「じゃあ、しなければいいよぉ」
「はぁ?」
「このまま今日は僕と寝ちゃお?」
ふんわりと白雪姫の首筋に顔を埋める。温かくて、くすぐったかった。
鏡に映る自分の顔がびっくりするぐらい火照っていて、それを隠すために俯く。
「まだ朝食も摂ってないのに」
「なら食べてからにする〜?」
お願いだからそこで話さないでほしい。むず痒さと羞恥で死んでしまいそうだ。
「そんなことしたら太っちゃう」
「大丈夫だよぉ、1日ぐらい。それに女の子は少しふくよかな方が好きだなぁ」
どさくさに紛れて太ももに触れてくる。
「〜っ、セクハラ反対っ!」
軽く手を叩けばあっさりと引いていく。
「スキンシップなのに〜」
「もう、本当に退いて!あなたといるとこっちまで眠くなるわ」
まったく。猫みたいなんだから!と、怒りマークをつけて言えばなんとか離れてくれた。
ようやくすっきりして嬉しいはずなのに、急に体温をなくした場所が寒くて物足りない。
やだ、私ってば何考えてるのかしら。
「それって…僕と一緒だと安心するってこと?」
「うっ…」
否定出来ない。
でも肯定することなんてもっと出来なくて。
「…知らないっ」
目をそらせば、一瞬呆けたのち「可愛い〜」と、再び飛びついてきた。
「わっ」
予想外の重みにバランスを崩して倒れ込む。
都合の良いことにそこは調度ベッドの上だった。
「ちょっと…!スリーピー?」
返事がない。
「ねぇってば!」
…もしかして、寝てる?
「スースー」
ありえないわ……
白雪姫は天井を見つめ溜め息をつく。
それはこの状況を満更悪くもないと思ってしまっている自分に向けたものであった。
怠惰な生活
(遊んで食べて、あなたと眠りたい)
20101017
……………………
きっとこのあとは白雪姫も一緒に寝ちゃいます。
で、そこを誰かに発見されて修羅場直行みたいな。