Novel
□ほっとするのは多分
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あんなことがあっても、疑えない自分が、愚かだと思った。
でも、愚かでよかった。
紫信は、ため息一つ、窓の外を見ていた。
想う心が、そうさせた。
かつてのため息は、不安からだった。
支えがなければ、崩れてしまいそうだった。
あの時から、変わらず傍にいた。いるだけで、安心した。理由はわからなかった。
でも、今更気づいた。
あの安心感は、父親のそれだと。
遅すぎたかもしれない。でも、そういうものなのだろう。
そして今もまた、支えてくれる存在が。
なぜ彼といると安心するか、よくわからないけど。
丁度そうやって、彼のことを考えだしたとき、
「紫信様」
文字通り音もなく、
「才蔵、戻りました。あの・・・」
彼が傍にいた。
「どうしたの才蔵、なに」
普段から頼り気のないようすの彼に、紫信はいつものあきれた口調で聞いた。
「今、近くでお祭りをやっているようで・・・行ってみませんか?」