Novel
□こっちだよ
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ズラリとならんだ果物を前に、二人は悦びに浸っていた。
こんなに沢山の収穫は久しぶりだ。勿論こっそり頂戴したものだけど。
「いやあ、最後に気づかれてちょっとヤバかったね、キバ」
過ぎたことなので笑いながら話すムクイを、もの言いたげな目で見ている。
「んーん、そうだなぁ」
「?どしたの」
キョトンとするムクイに、キバは力を込めて言った。
「おまえな、あーゆー時は、二手に別れろって言ってるだろが」
「あー・・・だって、みんなキバの方を追っかけるんだもん、キバ一人だったら捕まっちゃうよ」
二人の方が捕まると言おうとしたキバだが、かわりにため息をついた。
ムクイはもう、収穫物の方に目をやっていた。まったく、自分のことに関してはこんな調子だから、困る。心配になる。
「これ、なんて果物かな」
無邪気な顔で聞いてくるムクイを見て、思う。
こりゃ危なっかしくて、当分目を離せないなあ。
一人前には程遠いことを、嘆いて見せた。でも、心のどこかでホッとしていた。