Novel
□あなたが花
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日の温もりが心地好い朝。店に入ってきた新しい花の世話をしていた朝倉は、ふと彼女のことを思い出した。
(この花、彼女と組み合わせるといい感じだよなぁ)
彼女の姿を想像し、顔がゆるんだ。店の前を自転車が通ったとき、われにかえって赤面した。
(どんだけ好きなんだ、俺は)
店が始まり、お客がちらほらと見えた。特別な行事がない日も、結構忙しい。でも、苦にならない。
大好きな花に囲まれて、これ以上の幸せってないだろう。
ただ、そう思っていても、楽ではない。
今日なんか、お得意様に加え、初見の顔もあり、難しい注文、予約の催促、暑い、エアコンつけたい。
やっとお昼。朝にはやさしかった日の光も、今や夏のはげしさの兆しをみせている。
休憩室にエアコンはなく、窓を開けて涼んだ。遠くに見える新緑をぼーっとながめた。
少し落ち着き、さて午後の注文の品はどうするかと考えながらお茶をのんだ。
集中からか疲れからか、背後に近づく人に気づかなかった。