狐の小説

□大物食らい
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【無線ごっこ】 ガミスギ


 こちら石神、こちら石神、聞こえてる?聞こえてる?聞こえてるなら応答せよ。



 俺の最近のマイブームは脳内で無線ごっこ。あ、痛々しい趣味ー!とか言うなよ、やってみるとマジで楽しいんだからな。やってみろよ!
 無線ごっこはやってみると意外と楽しい。まるで俺が超能力者になったような気分でテレパシーが使えるような感覚になって楽しいんだ。適当に選んだ相手をジッと見つめて無線みたいな感覚で語りかける…まぁ、相手が返事したことはないんだがな。
 楽しすぎてついついやり過ぎると視線を感じた堺に一発殴られたこともあるのは思い出の一つだが、とにかく楽しい。
 今日も俺は楽しい楽しい無線ごっこをやります。標的は杉江!


 こちら石神、こちら石神、聞こえてる?聞こえてる?聞こえてるなら応答せよ。
 と繰り返し杉江をジッと見つめていると杉江が振り向いてきた。杉江はどうやら視線を感じたことで振り向いただけのようだ、不思議そうに首を傾げ俺に向かい声を出す。
 「何? 何か言いたそうだけど?」
 「ううん、何でもないよー」
 「ふぅん… ガミさんって、最近誰かに話しかけたそうに相手をジッと見ますよねどうしたんですか」
 「あ、わかっちゃった?」
 「はぁ…」
 ヘラヘラと笑う石神に呆れたようで曖昧に返事をしてくるようになった杉江に構わず石神は続ける。
 「でさー、俺って何て言いたそうにしてるかわかる?」
 「何て…って…えー…」
 「じゃあ今やるから当てろよ」
 「ちょっ…」
 マイペースな石神に惑わされながらも杉江は何かを言いたそうにしている石神に合わせるしかなくはぁ…と肩をすくめ石神に集中する。
 「えー……と……」
 「何か伝わって来たか?」
 「…………あ、アレですよね」
 「お! 言ってみろ言ってみろ!」
 「カンですけど… 応答せよ、とか聞こえてるか?とかですよね?」
 「……」
 ポカーンと口をあんぐりさせている石神に杉江は違ったかなぁ?と首を傾げるが石神はすぐに嬉しそうに笑みを浮かべ杉江を抱きしめる。
 「お前すげぇよ! 何でわかるんだよ!マジで!?すげぇよ!」
 「え、あ、そう、そうでしたか」
 どうして喜んでいるかもわからない杉江は戸惑うしかなく、結局練習しろーと達海に言われ分かれては数日後、杉江を見つめてばかりの石神を見かけるようになったと若手内で噂が広まっていた。中には杉江を見つめる石神の顔は満面の笑みだったと丹波が言ってたとか言ってなかったとか…

 こちら石神、こちら石神。聞こえる?聞こえる?
 杉江、杉江、大好き








 一方、杉江と達海。
 「え、何? 今度の試合休みたいって?」
 「えぇ、最近胃が痛くなりそうで…」
 「マジ、お前大丈夫かよー ご飯食べてる?ちゃんと寝てる?」
 「監督には言われたくありませんよ」
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