短編

□あなたが好きで
1ページ/1ページ

「耀さん」

そっと耀に呼びかける。

しかし耀は寝ていて気が付かない。

菊は嘆息をつくと起こすまい、と隣に腰をかける。


やっぱり夜は寒い。

こんな毛布も掛けずに寝ていたら寒いだろうと思い
菊は静かに耀に毛布を掛けた。

「・・耀さん。」

もう一回呼びかけるが気が付かない。

だんだんと寂しくなってきてそっと頬に手を添えた。


―――――――――こんなにも、好きなのに


そう思うと胸が苦しくなって思わず手を離す。
菊は立ち上がってその場を去ろうとした。

「・・・菊」

ゆっくりと目を開けてぽつりと耀はつぶやいた。
ピクッと反応した菊は振り向く。

「・・・起こしてしまいましたか」
「そんな事ないあるよ」
「そうですか・・・寒いですから布団でしっかり寝てくださいね」

そう言って出ていこうとすると後ろからぎゅっと耀が抱きしめた。

「・・・耀、さん?」
「行くなあるっ・・・」

菊は顔を真っ赤にして動かなかった。
しかしそっと手を握ってこくんとうなずいた。



「・・・大丈夫ですよ」




―――あなたのいないトコには行きませんからね・・・

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ