短編
□あなたが好きで
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「耀さん」
そっと耀に呼びかける。
しかし耀は寝ていて気が付かない。
菊は嘆息をつくと起こすまい、と隣に腰をかける。
やっぱり夜は寒い。
こんな毛布も掛けずに寝ていたら寒いだろうと思い
菊は静かに耀に毛布を掛けた。
「・・耀さん。」
もう一回呼びかけるが気が付かない。
だんだんと寂しくなってきてそっと頬に手を添えた。
―――――――――こんなにも、好きなのに
そう思うと胸が苦しくなって思わず手を離す。
菊は立ち上がってその場を去ろうとした。
「・・・菊」
ゆっくりと目を開けてぽつりと耀はつぶやいた。
ピクッと反応した菊は振り向く。
「・・・起こしてしまいましたか」
「そんな事ないあるよ」
「そうですか・・・寒いですから布団でしっかり寝てくださいね」
そう言って出ていこうとすると後ろからぎゅっと耀が抱きしめた。
「・・・耀、さん?」
「行くなあるっ・・・」
菊は顔を真っ赤にして動かなかった。
しかしそっと手を握ってこくんとうなずいた。
「・・・大丈夫ですよ」
―――あなたのいないトコには行きませんからね・・・