ファミコン★シンデレラ
□【3】憎さ余ってかわいさ1000倍?
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ついでに暖炉の掃除をしてから、シンデレラは義母の部屋を出た。
(お義母さまたちが帰ってきたら、今日はなにをしてあげようかしら)
そう考えるのも、とても楽しい。
思わずスキップしながら、両手に持った道具をガタガタを揺らして歩いていると、ちょうど廊下の前方からミシェルが歩いてきた。
「まあお嬢さま!
また暖炉のお掃除をなさっていたのですか?
奥さまたちも、もううるさくは言わないでしょうに」
「いいの、わたしがやりたくてやっていることだから」
「でも、お嬢さま、泣いていらっしゃったんじゃ……?」
言いながらミシェルは、シンデレラの瞳を覗きこむように見た。
涙のあとは、そう簡単には隠せないらしい。
だからシンデレラは、精一杯の笑顔を浮かべて答える。
「ええ、ちょっと嬉し泣きをね。
やっと<家族>らしい家族になってきたなって、思ったの」
「ああ!
それはありますよね。
最近の奥さまたちは、私たち使用人にもおやさしくて……」
「そのうち槍でも降るかもしれないわね」
「まあ!
お嬢さまったら、そんな本当にありえそうなこと、言わないでくださいよ」
実のところ、腹黒さはミシェルもシンデレラといい勝負だ。
2人して声を合わせて、クスクスと笑う。
「今日もなにか、お菓子をつくりますか?
お嬢さま」
「ええそうね、そうするわ」
そのまま一緒に厨房へと向かった。
2人が無事にロールケーキを焼きあげた頃、義母たちが外出から戻ってくる。
(そういえば、今日はどこに行っていたのかしら?)
いつもは行き先を教えてもらえるのだが、今日はなにも聞いていなかった。
あるいは、シンデレラ自身がテンパっていたせいで、訊き忘れていた部分もあるだろう。
シンデレラが玄関まで出迎えに行くと、3人ともなにか大きな紙袋を持っていた。
(あ、また買いものだったのね)
そう納得したシンデレラに、予想外な声がかかる。
「ミス・グレイ。
ちょうどいいところに」
「なんですか? お義母さま」
手招きされたから近づいていくと、義母はシンデレラの胸に、持っていた紙袋を押しつけた。
「これはわたくしが、昔着ていたドレスです。
あなたにあげましょう」
「まあ! ドレスを?」
たとえおさがりでも、シンデレラは嬉しかった。
シンデレラはまだ、社交界に着ていけるようなドレスを、持っていなかったからだ。