ファミコン★シンデレラ

□【3】憎さ余ってかわいさ1000倍?
1ページ/4ページ

 
 ついでに暖炉の掃除をしてから、シンデレラは義母の部屋を出た。

(お義母さまたちが帰ってきたら、今日はなにをしてあげようかしら)

 そう考えるのも、とても楽しい。

 思わずスキップしながら、両手に持った道具をガタガタを揺らして歩いていると、ちょうど廊下の前方からミシェルが歩いてきた。

「まあお嬢さま!
 また暖炉のお掃除をなさっていたのですか?
 奥さまたちも、もううるさくは言わないでしょうに」

「いいの、わたしがやりたくてやっていることだから」

「でも、お嬢さま、泣いていらっしゃったんじゃ……?」

 言いながらミシェルは、シンデレラの瞳を覗きこむように見た。

 涙のあとは、そう簡単には隠せないらしい。

 だからシンデレラは、精一杯の笑顔を浮かべて答える。

「ええ、ちょっと嬉し泣きをね。
 やっと<家族>らしい家族になってきたなって、思ったの」

「ああ!
 それはありますよね。
 最近の奥さまたちは、私たち使用人にもおやさしくて……」

「そのうち槍でも降るかもしれないわね」

「まあ!
 お嬢さまったら、そんな本当にありえそうなこと、言わないでくださいよ」

 実のところ、腹黒さはミシェルもシンデレラといい勝負だ。

 2人して声を合わせて、クスクスと笑う。

「今日もなにか、お菓子をつくりますか?
 お嬢さま」

「ええそうね、そうするわ」

 そのまま一緒に厨房へと向かった。

 2人が無事にロールケーキを焼きあげた頃、義母たちが外出から戻ってくる。

(そういえば、今日はどこに行っていたのかしら?)

 いつもは行き先を教えてもらえるのだが、今日はなにも聞いていなかった。

 あるいは、シンデレラ自身がテンパっていたせいで、訊き忘れていた部分もあるだろう。

 シンデレラが玄関まで出迎えに行くと、3人ともなにか大きな紙袋を持っていた。

(あ、また買いものだったのね)

 そう納得したシンデレラに、予想外な声がかかる。

「ミス・グレイ。
 ちょうどいいところに」

「なんですか? お義母さま」

 手招きされたから近づいていくと、義母はシンデレラの胸に、持っていた紙袋を押しつけた。

「これはわたくしが、昔着ていたドレスです。
 あなたにあげましょう」

「まあ! ドレスを?」

 たとえおさがりでも、シンデレラは嬉しかった。

 シンデレラはまだ、社交界に着ていけるようなドレスを、持っていなかったからだ。
 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ