銀魂 short

□時間ヨ、止マレ
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「晋介ぇ…」


沖田は高杉の胡座の上に座り、高杉の胸に寄りかかっている。


「総悟、どうしたァ?」

優しく綺麗な髪を撫で沖田に問う。


「まだ、離れなくないでさァ…」

沖田は高杉の方に顔を向け、高杉の胸板に顔をすり寄せる。


高杉達は今、逢瀬の最中だ。
高杉は反幕府側、沖田は幕府側。

つまり2人は敵同士で、会っている事がばれたら、一大事だ。


「ククッ…、可愛いこと言ってくれるじゃねェか」


「まだ、一緒にいたいでさ…」

小さな子供みたいに弱々しく高杉に甘える。いつものあの腹黒でドSな沖田はここにいない。


高杉だけが知っている沖田のもうひとつの顔。高杉はその事が嬉しくて、唇が綺麗な弧を描く。


「すまねェが、今はまだ無理だ」

沖田の身体を自分の方に向けて高杉は沖田に言い聞かせるように優しく話す。


沖田の顔は悲しみに歪んだが迷惑をかけてはいけないと思ったのか、強がりを見せた。

「わかってるんでさァ、ちょいと我が侭言ってみただけでさァ」


それに気づいていない高杉ではないが、気づかないふりをした。


「そうかァ、お前ェも成長したなァ」

今度は乱暴に頭を掻き乱す。


「ちょっ…晋介!子供扱いするじゃねィ!俺はもう十分成長したんでィッ」


沖田は少し顔を赤く染め高杉を睨むように下から覗きこむ。


「クククッ…そうだなァ」

そう言いつつも高杉は沖田を乱暴に撫でまくる。


「はあ…、もういいでさ」

沖田は諦めたのか、抵抗しなくなった。
いつものことで慣れているのだろう。


少し拗ねた様子で頬を膨らませている。

可愛い…と高杉はそう思い沖田を抱き締める。沖田も抱き締め返す。

互いの体温が心地いい。
ずっと一緒にいられたら…、と2人は同じ事を考えていた。

「次はいつ会えるんですかィ」


沖田は何かを悟ったのか高杉の胸板に顔を埋めたまま高杉に問う。

「今回は遠出になる。少なくとも1ヶ月は掛かる…」


「そうですかィ、寂しいですねィ」

聞いて、抱きしめている腕に少し力を込める。


「このまま、時間が止まればいいのに」


沖田は1人、小さく呟く。聞こえていたのか高杉がそうだなと腕に力を込める。だが、その想いも虚しく時は刻一刻と確実に過ぎていく。


どのくらいこうしていただろうか。

「…そろそろ時間だ」

そう言って立ち上がる。
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