おお振り short

□9回裏
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9回裏、1アウト。

中継結果は5対4。

俺達は桐青に1点リードして勝っている。


正直、夢見てる気分だ。
あの桐青相手にあとアウト2つ取れば勝てるんだ。


いま打者は4番のショートで2年の青木。
次に控えているのは、キャッチャーで3年の河合。桐青のキャプテンだ。


んで、3塁走者に足の速いサードで唯一の1年。迅だ。

こんな危機的状況。心臓が爆発しそうだ。きっといま球が飛んできたら間違いなく取れない。


でも、三橋が・・みんなが声だして頑張ってる。だから俺も外野経験の少ない水谷に声を掛ける。


「水谷ぃッ!とったら4つだぞ!」

まるで、自分に言い聞かせるような口ぶりで怒鳴る。

花井が三橋に叫ぶ。
後のことは任せろって。
お前の1番いい球投げろって。

俺も同じこと思ってる。
この状況だ。球速落ちてんのはあたり前だし、打たれても俺達が守ればいいんだ。

三橋は決心がついたのか阿部に向かって精一杯の球を投げた。

打球はセンターへ。つまり俺の所に飛んできた。

球に向かって走っている最中。
ふと、浜田の声がした。


がんばれ。今日勝てよ。応援してる。
大好き。愛してる。

今日、来る途中に言われた言葉たちだ。


球をとって花井に渡す。

花井の球は阿部のミットに吸い込まれた。

ここで試合終了。
俺達は勝った。

援団挨拶で浜田に向かって口を開く。


    "ありがとう"

浜田にはきっと聞こえていないだろう。

でも、今日の試合。
お前のおかげで勝てた。

そんなこと・・絶対、口にはしないけど言わせて欲しいんだ。




ありがとう、これからも愛してる




fin
 

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