捧げ・頂き・リク小説
□一生、側で
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「兄ちゃん!」
学校の廊下で大好きな人を見つけた。その人物に向かって走り出し、勢いを殺さずそのまま抱きつく。
「…っ誰だァ?って総悟か、どうした」
一瞬凄く怖い顔をしたが、総悟とわかりいつもの優しい兄の顔になった。
「見かけたから呼んだだけでさァ!」
そう言って腕に力を入れて顔を擦り寄せる。
(晋兄といると落ち着きまさァ)
「晋兄…大好きでさァ!」
少し驚いた様子だったが、総悟の頭に手を置き「俺もだ」と撫でる。
辺りは甘い雰囲気が漂っていて、完璧に2人だけの世界だ・・った。
「おーい。チャイム鳴ってんぞー。いい加減離れろ。そこのバカ兄弟」
せっかくの甘い雰囲気を壊したそのやる気のない声が誰もいない廊下に響く。
「銀八…邪魔すんじゃねェよ」
見ると晋助の担任・・坂田銀八がいた。
「もう授業始まってるんですけど。ほら、高杉弟も教室行きなさい」
銀八は晋助の腕を掴んで教室に連れて行くが、なぜか凄く重い。
振り返ってみると、高杉弟・・・つまり総悟が掴んでいない方の腕を引っ張っていた。
「弟くんよぉ…離してくれねぇかなぁ?授業しなきゃなんないしぃ…」
「嫌でさァ!晋兄ちゃんとまだ一緒にいたいでさッ」
小学生かこいつは・・とか思いながら銀八は掴んでいる腕に力を込める。晋助はまるで綱引きの縄の役割を果たしているように見えた。
「おい…痛ェんだが」
そんな晋助の声も届かず、2人は腕を引っ張り続けた。
「おい、いい加減に…ッ」
言ってる最中に総悟が掴んでいた腕の痛さがなくなる。と同時に銀八の方に身体が傾く。
総悟の方を見ると肩を上下させ、少し息が荒い。
「俺、晋兄ちゃんの事…大好きなんでさァ。もう高1で兄離れしないといけないのはわかってるんでさ。けど、」
一旦、言葉を切り息を整える。それから晋助の目を見ながら口を開く。
「それでも、離れたくないって思っちまうんでさ…ごめんなせェ」
「総悟…」
晋助は、総悟の方に駆け寄りそっと抱きしめる。
「俺も…お前のこと大事だし、この世で1番大切だ」
まるで、壊れ物を扱うように優しく包みこむ。
「離れなくていい。ずっと兄ちゃんの側にいろ」
「だから、そんな悲しい顔をするな」と、優しく頭を撫でてやる。
「晋兄ちゃん…ッ」
総悟は晋助の背中に腕を回し抱きしめ返した。