拍手夢

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うだる程の真夏日。



遠くから聞こえる花火大会の騒めき。



暗く染まったはずの夜の帳は
打ち上げられては散る
大輪の花火に彩られて。



ガタリ、と少し軋む扉を開けて
オフィスを出た。







祭で騒めく人混みを一人逆走して
ゆっくりと帰路を辿っていく。








「君、頼むよ」




「あんたなら平気だろ」




「流石だわ。あとこれもね」











嘘を繕った言葉に負けて、
年に一度のチャンスを逃すとは。








(……あれ?)









自宅のドアの鍵が開いてる。


鍵まで掛け忘れたのだろうか。








ガランとしたリビングのソファーに座る。








瞬間






ぎゅっ








「うひゃっ!?!」

「ただいまの一言もナシか?Honey?」

「まっ、まままままさまさむねっ!?!」

「Ah?大丈夫か?」



後ろから細いのに逞しい腕が回された。






鍵も開いてたから、
もう少しで変質者撲殺拳を撃つ処だった。








「………ごめん」

「?」

「約束してたのに…………
花火大会」

「何がだ」

「だって、行けなか……った?」




政宗がカーテンを開ける。





「花火大会なら、今からStartだぜ?」





ベランダに置かれた
大量の手持ち花火とバケツ、


近くのテーブルには
氷り水に浸かっているビールと枝豆。






「…こんなに買ってきたの?」

「Yes。花火ならハデにやらなきゃつまらねぇだろ?」

「……ビールに枝豆も?」

「Of course……My sweet?」

「?」









「…癖になるなよ?」

「無理」

「Ha!上等だ!
Let's party!!」


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