Secondry Fiction

□トキメキの反対側
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眠い。


どうしょうもなく眠い。


痛い。


何もしなくても痛い。


これも全部昨日の練習のせいだ。


「キャプ!ちゃんと気合いいれなさいよ!!」


今でもアイツのかなりき声が
耳にこびりついている。
筋肉痛でもう1ミクロンも動きたくない。


午後の授業現国。
もう眠い。


今目の前に布団あったら三秒で寝れる。


俺はせめて寝ないためにもと、
ペン回しをして、
眠気をまぎらわすことにした。


あー、ダメ何やっても眠い。


カシャンッ


あ、やべ、
落としちった。
しかもとなりの人の足のところまで
とんでっちまった。


うわ、
きまず〜…。


「あ、これ日向くんの?」


「あ…、ごめん。」


俺は挙動不審になりながら、
そんなふうに答えるしかなかった。


だって、
その子がすげえ美人だから!!


なんで、
今まで、
隣の席の子がこんなかわいいことに気づかなかったんだろう。


あ、

いつも練習の疲れのせいで寝てたからか。


『あんたが真面目に授業聞いてないから眠くなるのよ!!』


なんて監督のかなりき声が
頭のなかに響いちゃうんだから、
俺はあいつに呪われてんのかも。


俺がそんなふうに
テンパってる間に、
その子は流れるような仕草で、
自分の足元のシャーペンを
拾ってくれた。


その子が屈んだ時に
なんかいい匂いがした。


シャンプーなのかな?
なんか堀北マイちゃんに似てるなぁ。
とかぼんやり考えてたら、
「はい。」
と俺にシャーペンを手渡してくれた。


「ども。」
なんで、こんな時に気のきいたこと言えないんだ、
と悔やみながら、
シャーペンを受け取った。


ちょっとだけ指先が触れあってしまった。



男、
てか俺って生き物はなんて単純なんだ!!


そのほんのちょっとで、
ドキドキしちゃうだろーが、
気になってしまうだろーが、


てか、
もうこんなかわいい彼女ほしいな。


あれ、
これって好きじゃね?


そのほんの僅かな接触は
ある意味で、
静電気なんかよりずっと
刺激的で。。


隣がすごい気になって、
てか、
その子に俺がどんなふうに見られてるかも気になって、
なんだか、妙に落ち着かない。

「ねぇ、日向くんて。」


「ん?」


うわぁ、どーしよ。
話しかけられちゃったけど、
俺ちゃんと話せてる?
キザってないかな?
ちょっとくらいキザってた方がいいのかな?


「前、金髪で、髪伸ばしてたよね?」

「うん。」


ダメだ。
今の俺にはうんしか言えねーもん。


「私その頃の髪型好きだったんだけどなぁ。」














その後、俺は完全にショートしてしまった。
幸か不幸か、
先生が「私語しない!」なんて注意するから、
俺達の会話は途切れてしまった。
まぁ、それ以上会話続いてたら、
俺は多分ダメだったと思う。


だって、かわいい子に
直接じゃないにしても、
好きとか、
言われて健全でいられる男の器とか、
持ってねーもん、俺は。


そんな器百均に売ってたらいいなぁ
とかそーゆーレベルだもん。





それから、
一ヶ月おれは、
その子がすごい気になって、
教室にいるとき
そわそわしてどうしようもなかった。


けど、
会話らしい会話はそれ以降あまりなくて、
俺も自分から話しかけることができないままだった。
朝におはよう、
帰りにバイバイ。
その程度の挨拶を交わす関係。


俺の中の大きな変化は、
又髪を伸ばし始めたことくらいだ。
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