dream
□元の場所に帰して来なさい!
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「……」
「……」
無言で睨み合う二人に綱吉は固まって見守るしかなかった。
今にも戦闘に発展しそうな睨み合い。
いや、一人は睨むつもりはなくただ純粋に見上げているようなのだが。そう、身長差から彼は見上げるしかないのだ。
首が痛そうだな、と現実逃避をしている間に事態は進展した。
「…やぁ」
「こんにちは」
ひょい、とその小さな身体をした彼を抱き上げ視界の高さを合わせて彼女が挨拶をした。心なしか顔が穏やかだ。
「…えぇー?」
抱き上げた、挨拶をした、しかも、顔が穏やか。
まさか彼女が、恭弥以外にそんな顔をするなんて思わず目を擦るが現実は変わらない。もしかして、幻覚ではないだろうか。
「私は雲雀だよ」
「私は風と申します」
「そう、風。良い名前だね」
加えて彼女が友好的な態度を取るとか幻聴まで聞こえて来た。
「ねぇ、君、沢田綱吉だっけ」
「は、はいぃ!?」
「この子、頂戴」
すみません、もう現実を直視したくありません。
「恭弥が赤ん坊の頃はこうだったんだろうね、見たことなかったから嬉しいな」
それは恭弥と顔が似た彼女も同じなのだが、それは失念しているらしい。
心なしか恍惚として風を抱き締める姿が見えた気がして必死に目を逸らす。
「あの、風さんって普通の赤ん坊じゃなくてですね…」
「知ってる、アルコバレーノなんでしょ」
「あ、あの、その、風さんの方も都合ってものがですね…」
「ダメかな」
「良いですよ」
「ちょっとぉぉおお!!?」
何で本人がオッケー出してんの!それじゃあ止められなくなっちゃったじゃん!明日の学校が地獄に染まる気がするよ!
何も言えなくなって風を抱き締めた彼女の背を見送るしかなかった。
「…何、それ、姉さん」
珍しく上機嫌の姉の腕の中の存在に、恭弥は己の顔が引き付るのを感じた。
腕には姉に良く似た赤ん坊。
いや、ないない、そんなはずはない、この一年にそんな気配はない、つまり、これは。
「今日から新しい家族だよ」
「お願いします」
「も、
元の場所に帰して来なさい!」
(どっから捕って来たの!)(ちゃんとこの子の許可は取ったよ、ね?)(えぇ、お姉ちゃん)(なっ…!弟の座は渡さないよ!)
END