novel

□伝えようとした
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明日の準備を終え、ベッドに座ると、ルークが話しかけてきた。


「なぁアッシュ。俺、おまえと一緒にいたいよ・・・」

少し寂しそうな声だった。

一緒にいたい。それは俺だって同じこと。

出来るなら、最期まで。

でも、それは叶わないとわかっている。

だから、甘やかすことは出来ないんだ。ルークも、俺も。

「一緒にいたい、か・・・」

「アッシュ?」

思わず繰り返すと、ルークが不思議そうにこちらを見ていた。

「いや、何でもねぇ」

「そっか・・・」


ルークは相変わらずトーンの低い声で話す。

寂しいのか、怖いのか、不安なのか。

自分から人が離れていくのに耐えられないのだろう。

それで散々傷ついてきたからな。

いたわってやりたい。癒してやりたい。そして、守ってやりたい。

すべての痛みや苦しみから。

だけど。

それじゃ駄目なんだ。

そういうもの全てを感じ、知っていかなければならないのだから。

ここまできて、今更甘やかすことなど出来ない。

言わなければ。伝えなければ。

俺の気持ちを、考えを。

・・・ひとりで歩いていけるように。

「レプリカ」

「何・・・?」

話そうと思っているのに、ルークの顔を見ると何故かそれを躊躇ってしまう。

それじゃ駄目なんだとはわかっているのだけれど。

ルークの気持ちを考えると、話せなくなるのだ。

きっと、傷つく。

それでも・・・

「レ・・・」

「なぁ、アッシュ・・・」

「・・・、なんだ」

「俺のこと、・・・好き?」

「・・・っ」

話を遮ったかと思えば、なにを聞いてくるんだ。こいつは。

「俺は好きなんだけど・・・、変なこと聞いてごめんな? こんなこと、・・・気持ち悪かったよな。」

何言ってんだろ、俺。ルークはあはは、と笑っていた。

それを見ていたら、段々イライラしてきた。

「チッ・・・誰が気持ち悪いと言った?」

「あ、アッシュ?」

「俺は、・・・・好きだ。おまえはいつも勘違いしていたようだが、嫌いじゃない」

「アッシュ・・・ありがとう」

「ふん、思い込みなんかで勝手に決めてんじゃねぇよ」

ルークは笑っていた。どこか、寂しそうでもあったが。

それより、勢いで言ってしまった言葉が恥ずかしい。

ただ普通に好きだと言えばよかったのだろうが。

「なら、さ・・・」


・・・一緒に、居てくれる・・・?


ひんやりとした風が二人の頬を撫でた。

いつの間に開けたのか、窓が揺れていた。

「・・・、それは・・・・」

「寂しいんだ、一人じゃ。真っ暗なんだ。何も見えない。怖んだ・・・」

ルークは自分の腕を掻き抱いて、震えていた。

大きな瞳に涙を浮かべて。

「アッシュじゃなきゃ、ダメなんだ・・・!」

ねぇ、

そう言って俺に縋ってきた。

聞いてやりたいのは山々なのだが・・・

「っ、駄目だ」

「・・・ッ! どうして!?」

ぽろぽろと涙をこぼしながら、震える声で訊ねてくる。

「・・・どうしても、だ」

「やだ・・・いやだいやだいやだいやだいやだぁっ!」

「レプリカ・・・」

「いやだよ・・・みんな、俺から離れていっちゃった・・・ひとりだ・・・やだ・・・怖いよ、寂しいよ・・・・」

ルークは力無く床に座り込むと、何かを否定するように首を振っていた。

そんなルークの姿を見ているのは耐えられなかった。

「レプリカ・・・いや、ルーク」

よく聞け。

ルークはゆっくりと顔を上げると、アッシュを見た。

なに? とルークは首を傾げ、次の言葉を待っていた。

アッシュは話難さに舌打ちした。

それよりも、ルークの態度に苛々させられる。

自分を嫌いだと思い込んでいた相手に告白し、好きだと言われればそれに縋る。

お前じゃなきゃダメなんだ。きっと他の奴にも言ったのだろう。

あぁ、俺はお前が好きな筈なのに、疑うことしかできない。とんだ臆病者だな、俺は。

信じたいんだ。お前を。信じさせてくれ。

そういって俺はお前に罪を擦り付けるんだ。

そして、アッシュは床に座っているルークの肩を押し、組敷いた。

「アッシュ・・・?」

黙ってルークの服のボタンを外していく。

さすがに異変に気づいたのか、ルークが口を開いた。

「あっ、アッシュ!何して・・・」

「俺じゃなきゃ、駄目なんだろ?」

「え・・・」

ルークの言葉を繰り返して言うと、言った本人は困ったような顔をした。

「そういう意味じゃ・・・!」

「俺にこうしてもらいたかったんだろ?」

「ぁっ!」

黒いインナーの上から胸の突起を摘んだ。すると、ルークはビクリと震えて鳴いた。

「あっ・・・好きって・・・おれのこと、好きって・・・言ったのにっ!」

「あぁ・・・ずっとこうしたかった。それぐらい、好きなんだ」

「うぁッ・・・!?」

インナーを捲くし上げ、ぷっくりと膨らんだ胸の突起を噛む。

ルークはぽろりと涙をこぼした。

それが快楽によるものなのか、不快感によるものなのかはわからない。

それとも、別の理由なのか・・・

しかし、それを考えている余裕は無い。

嫌ならとっくに逃げているはず。だから、不快感からではないのだろう。

それに、もうやめることはできない。後戻りはできないのだ。

「レプリカ、嫌なら嫌と言え。今ならやめてやる」


これが最後の警告だ。次は、もう無い。


「・・・大丈夫。続けて、アッシュ・・・」

嫌じゃないよ。アッシュが俺のことどれくらい好きかっていうの、わかったから・・・。嬉しいよ、アッシュ。

ルークの意外な答えにアッシュは少し驚いたが、そうか。と言って行為を再開した。







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