novel
□変態に恋されてしまいました5題
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01.スキンシップじゃなくてセクハラです
「ルーク!」
「ガ……いッ!?」
名を呼ばれ振り向くと、そこにはものすごい笑顔で走ってくる親友がいた。
速い。速すぎる。
結構遠いところにいたのに、もう目前に迫ってきている。
これ…避けなきゃ肋骨とか逝くんじゃね…?
頭では避けなきゃいけないとわかっているのに、ガイの俊足と恐ろしいほどキラキラした笑顔を見ると 、体が動かなかった。
「るうううくうううううううう」
「く、来るなぁああああ!!! ……ぐえっ」
あまりの速さに体が反応できず、ガイの直撃を受けた。
正直、意識が遠のいた。
バタンと後ろに倒れる。
「ルーク、来るなーは酷いんじゃないか?」
いくら俺でも傷つくんだぞ☆
意識が飛ぶ前に肩を掴まれガクガクと揺すられたため、辛うじて意識を保つことができた。
しかし、次の瞬間に強烈なウインクを食らったので瀕死になりかけた。
「あ…あは、ごめ…」
「まったく、ルークはツンデレだな!」
「はぁ?」
こいつは何を言い出すんだろう。
頭おかしいんじゃないのか
「ッ!?」
なんだ…? この違和感…
ガイの手の位置……?
「がっ…ガイ! どこ触ってんだよ!?」
「ん? どこって、しr」
「んなことわかってるっての! なんで触ってんのかって聞いてんだよ!」
「え…」
え… じゃねえよ! なんで悲しげな目してんだよ!
立ち上がろうとしたが、なぜかガッチリと抱き締められていてダメだった。
どうしたらいいんだろう。
このまま尻を撫で回されていればいいのだろうか…
「ガイー♪」
「お、ジェイド。どうしたんだ?」
「いえー、ルークが死んだ魚のような目をしているので報告しにきただけですよ」
「なんだって!?」
何があった、ルークッ!!
再びガクガクと肩を揺すられる。
首が取れそうだ…
「大丈夫ですかぁー? ルークゥ」
「……」
見てないで助けてくれよジェイド。
「ガ…ガイ、わかったから…わかったから離してくれ…」
「ル、ルーク…」
珍しく、素直に従うガイ。
いつもこうならいいのに
とりあえず、この場から離れよう。
立ち上がり、パンパンと服についた砂やら埃やらをはらう。
ガイとジェイドに背を向けて他の仲間たちの所へ歩き出した。
はずだった。
「うわっ!?」
足を掴まれる感覚と同時に、地面が迫ってきた。
ビターンと顔面から着地する。
「……」
じんじんと痛み出す、顔。
鼻が折れるかと思った。
幸い、砂利道ではなかったので石とかそういうものはなく、大きな怪我にはならなかったのだが…
「いっ……てぇえええええええええええ!! 誰だよ! こんなことする奴! 俺に恨みでもあるの」
両腕で体を支えて、上体を起こし、振り返る。
と、そこにはうつ伏せになって俺の右足を掴んでいるガイと、しゃがんで左足を掴み、且つ挙手しているジェイドがいた。
「…か」
怒る気も失せる
いい年して何してんだ? コイツらは。
「…離せよ」
「おやおや〜? 照れているのですか」
「照れてねえよ! 怒ってんだよ!」
「ルークはツンデレだからな。…ほんとは怒ってないクセに」
「黙れバカガイ!」
うふふと笑う変態達。
気色悪い。
あ、鳥肌たってる。
「ティアたちに用があるから行かせてくれ」
怒鳴ったせいで喉が痛くなったので、少し小さな声で言った。
あんたたちに構ってると疲れるから開放してくれと。
「仕方ないですねぇ」
「ルーク…」
ジェイドはやれやれと首を振っている。
こっちが言いたい
ガイに至っては、うつ伏せに寝たまま、肩を大きく震わせて、わざとらしくしゃくりあげている。
こっちが泣きたい
「じゃあ、後でな」
足を掴む手を蹴飛ばし、立ち上がる。
今度こそ、ティアたちのところに辿り着くことができた。
なんてダメな大人たちなのだろう。
あんな大人にはなりたくないぜ
♪