novel
□感謝してる
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「俺たちみたいだ」
「ん、どういう意味だ?」
「ルークの朱と、俺の金。…ほら、先の方が金色になってるだろ? 俺のと同じだ」
「……。ほんとだ!」
「運命、…かな」
恥ずかしそうに、照れたように、困ったような笑みを浮かべた彼の顔を今でもよく覚えている。
「きっとそうだよ」と言った自分は、一体どんな顔をしていたのだろう。
…まさか、泣いていたなんてことはないだろう。確信はないけれど。
その時も、彼は髪を梳いてくれた。その指の感触が好きだった。大きくて優しい手が好きだった。
今でも鮮明に思い出せる、ある昼の1コマ。大きな木が、陰を作って2人をお天道様から隠してくれていた。
きっとあの時の2人は、さくらんぼのようにお互い顔を真っ赤にしていたんだろう。木の陰は、それすらも隠してしまっていたらしい。
…そして、それから2人の距離は急速に縮まって。親友だった2人は、恋人同士になった。
最初は初めてのことだらけで大変だったことを覚えている。恋人ができたことも、手を繋いだことも、キスをしたことも。どれも初めてだった。
こんなに満たされて、幸せだと感じたことも、全部全部、初めてだった。
彼と見る景色は、今まで以上に鮮やかに見えた。けれど、その中でも『彼』が1番鮮やかに見えた。彼を前にすると、どんなに美しい花でも、霞んで見えた。
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