novel

□I love.
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すっかり冷たくなってしまったアニスは、純白のドレスを着てそこにいた。胸の前で祈るように両手を組んでいる。

今のアニスは、あの明るく元気な少女とは対照的な、静かで清楚な少女だった。ツインテールに結い上げているリボンをほどき、ゆるいウェーブのかかった肩まである髪を広げ、穏やかな表情で目を閉じている。

美しい。

眠る女性は実に美しい!

例え活発な女の子だったとしても、眠っている間はこんなにも静かで、美しい。

「さて…と、そろそろやっときますかね」

ガイが隣の部屋から大きな木の板と工具を持ってきた。板はアニスのドレスと同様に真っ白なもので、何かを作るとしたらとても見栄えの良いものができそうだ。

……という冗談はさておき、アニスの身長と幅をメモした紙をガイに手渡す。メモを受け取ったガイはそれにプラスアルファした長さで板に印を付けた。

ガイが譜業式鋸で板を切っていく。木屑が溜まり、床に積もっていくのをぼんやりと眺めていた。そうしている間に、ガイは組み立てを始めていた。

ガイの手際のよさにはいつも感心させられる。『いれもの』はあっという間に完成した。

「ルーク、そろそろ」

「わーってるよ」

アニスと触れ合っていられるのも、ここまで。

アニスを『いれもの』に移し変え、髪を撫でてキスをする。これが正真正銘の「別れのキス」だ。

可笑しい気分になる。

永遠に会えないわけでもないのに、さよなら、だなんて。

「さようなら、愛しのアニス」

ガイが『いれもの』に蓋をすると、アニスは居なくなってしまった。

「よかったのか?」

「あぁ、いいんだ。だって俺はガイの方が好きだから」

女の子は好きだ。

アニスもティアもナタリアもメイドも、みんなみんな。

だけど、誰もガイの代わりにはなれない。俺はどんな女の子よりも、いちばんガイが好きなんだ。

「ルーク、」

「ガイ、キて」

さっきまで俺の花嫁が眠っていたベッドで、ガイと交わる。

壁に立て掛けられた棺から、アニスがこちらを見ている。

「…っ、アニスが、見てる…」

「俺たちのことを、祝福してくれてるんだろ」

「ん、ンッ、ァ……きもちいい…っ」

今この時が、いちばん幸せなんだ。大好きなガイに抱かれて、好きな女の子に見守られている、この時が。

あとは、あのセレニアの花のような……あの人が欲しい。

欲しい。


欲しい。




欲しい!





「はっ、ぁ、…ぁああッ」

ガイに唇を塞がれながら、ちらとアニスを見やる。硝子に自分の紅潮した顔が映っていた。






「次は、お前が欲しい」






…ティア。



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