StrikeWitches-太平洋の魔女

□SP03:初戦
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 まず、エイミーは妙なことに気が付いた。戦闘状態に入っているいも関わらず、小型ネウロイでさえ散開していないのだ。欧州でのレポートを読んでいた彼女は、ネウロイにも知能があることを理解しているため、それを不気味に感じていた。
(いや、気のせいだろう…)
 エイミーは頭を振って湧き出した疑念を振り払い、ティファニーとロッテを組んで高度を上げる。
 これだけの戦力差に加えて、二人は訓練を終えただけで実戦経験のない、言わば全くの素人だった。ガッツリ組んで戦えば、結果は見えている。勝機があるとすれば、高空からの一撃離脱戦法しかない。問題は、ネウロイはコアを攻撃しない限りどうしようもないという点だが、小型相手ならばハチの巣にしてやれば同じことだとエイミーは判断した。
「ティファニー、お前は私の後ろにピッタリと張り付いていろ。射撃後は後方援護を頼む」
 彼女の指示にティファニーは大きく頷く。続々と発艦を終えて来た指揮下のF4Fも、エイミーの指示を聞いて突撃を開始する。
 彼らの突撃を露払いにエイミーは肉薄し、中型のコアを探し出そうと考えていたが、次の瞬間には、彼女は絶句していた。
 中型ネウロイが体表の上面全体からレーザーを撃ち出し、突撃体勢に入っていたF4Fを全て叩き落としてしまったのである。彼女たちは、まんまとネウロイの仕掛けた罠に掛かったというわけだ。
「ネウロイめ…、小癪な真似を…!」
 エイミーは自身の持つM1919A4に、危うく握り潰しかねないほどの力を加えて頭に血が昇りそうなのを堪える。ここで冷静さを失うことは死を意味する。一端、彼女たちはネウロイから距離を取る。
「どうしましょう、リファ…。これじゃ近付くことも出来ませんよ…」
 M1918BARを持つティファニーは、不安そうな顔をエイミーに向ける。
 通信機から零れ聞いた内容から判断するに、ラバウルを発した扶桑の艦隊が全速力でこちらに向かって来ているらしい。時間稼ぎくらいなら何とかなる。
「…ティファニーは現位置から狙撃を行え。残存機は私に続け。今度は下から仕掛ける」
 あれだけの射撃部位を上面に配置しているということは、下方の弾幕は薄いとエイミーは直感したのだ。しかし、当然、コアも防御が厚い方にあると思われるため、こちらは囮でティファニーの射撃が本命となる。
 エイミーの空間把握の固有魔法に対して、ティファニーの固有魔法は物体遠隔操作。これを応用しての弾道修正が彼女には可能なのだ。もちろん、実戦での射撃は初めてだが。
 エイミーと彼女が率いる戦闘機隊が、小型ネウロイの攻撃を避けながら中型ネウロイの真下に付く。ネウロイは近くにいる彼女たちに攻撃を集中するが、予想通り弾幕は大したことはない。
(ネウロイがリファたちに気を取られてる…今なら)
 ティファニーが引き金を絞るとネウロイの体表が飛び散り、真ん中の辺りにコアが剥き出しになる。
 彼女はトドメを刺そうとして再度引き金を絞るが、弾が出ない。弾詰まりだった。
「そんな…っ!この銃が詰まるなんて、どうしてっ!?」
 BrowningAutomaticRifle、通称B.A.R.は、その信頼性の高さから第一次大戦時から使われている分隊支援火器だ。滅多なことでは弾詰まりなどを起こさない。
 それが、運悪く何かが入り込みでもしたのか故障してしまったのだ。


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