StrikeWitches-太平洋の魔女

□SP06:コールサイン
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 見事に(性的な意味で)扶桑の魔女を完食したクリスティーナは、用が済むと早々にアルマを連れて帰って行った。
 被害に遭った扶桑の魔女たちは、翔鶴に帰還してもモヤモヤとしていた。
 宮辺などは恋する乙女の目をしている。何かに目覚めてしまったようだ。
「海軍には多いって聞いたことあったけど…」
 飛行甲板で円の描くように体育座りをする被害者たちは、作業をするのに邪魔でしかない。もちろん、宮辺はこの中に含まれていない。
 溜め息で合唱もとい自身のファーストに合掌していると、やはりあの人がやって来る。
「今度はどうした?やけに元気がなさそうだが…」
 盛大に勘違いをしてそのままの小沢少将だ。もしや、自分がこの艦にいるせいではないか、と勘違いに勘違いを重ね、同型艦の瑞鶴に移ることも覚悟して話し掛けているのだが、彼女たちは知る由もない。全員が宮辺に視線を向け「あっちに聞け」と暗に示す。
 小沢は冷や汗全開で向き直り、宮辺に何があったのかを聞く。
「わたし、生まれて始めて恋をしました!」
 やや興奮気味で答える宮辺に、小沢は困った顔をする。軍規で、魔女にそういう話はご法度と決められているのだ。
「大丈夫ですよ、司令…。相手はリベリオン海兵隊の魔女ですから…」
 嶋田の言に、小沢はさらに困ってしまった。軍規とかそういうレベルじゃなく良いのだろうか、と。

『警報、警報!ニューブリテン島南部にネウロイ出現!スオムス戦域で確認された多脚戦車と同型の陸戦型ネウロイが上陸しているとの報!』

 図ったかのようなタイミングでネウロイ発見の報が入る。この瞬間、小沢の頭からは宮辺の恋のことはすっ飛んだ。
「ふむ、間一髪のところで間に合うかどうかといったところか…」
 目覚めてしまった子は放置しておいて、小沢は現在の艦隊位置とネウロイの出現座標との距離を考える。交戦することを考慮すると、性能表通りの攻撃半径は到底維持できない。
 艦隊がトラックを出発していたのは唯一の救いだが、航続性能の高い零式艦上戦闘脚二一型でさえ片道でラバウル基地に届くかどうかの距離だ。戦闘を行う時間などない。
 幸い、敵は進攻速度の遅い陸戦型だ。距離を稼ぐ時間はあるし、ラバウルには扶桑陸軍の陸戦魔女もいる。多少の被害は覚悟しなければならないが、最も確実性の高い戦い方はそれしかなかった。
「…お前たちはしばらく待機……おや?」
 小沢が顔を上げた時には、既に宮辺以外の姿は見えなくなっていた。
「宮辺軍曹、嶋田少尉たちはどこへ?」
「格納庫です」
 この時小沢は、遂に反抗期が来たのかと思ったと、後に出版された手記に記している。


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