StrikeWitches-太平洋の魔女

□SP08:南洋の怪物
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 この南の海に来て三ヶ月が経ち、元から蒸し暑い気候はさらに磨きが掛かっていた。
 特に、鉄に囲まれた軍艦の内部は延焼を防ぐために複雑な構造をしており、それが熱気を溜める原因になっていた。
「暑いですねー…」
 今日、何度目かも分からない単語を呟くのはティファニーだ。まだマシな部屋なのだが大胆にも薄着になっていても、流れる汗が止まらない。
「言うな、ティファニー…」
 余計暑くなるから止めろというのはエイミー。思考回路が切断出来ればどれほど楽だろうか。そんな考えも浮かんで来る。
 ネウロイが現れれば空に上がれる。陽射しはキツイが、気温は低いので天国だ。
 数日前に、海兵隊の航空ウィッチがラバウル基地に移動し、第61任務部隊をネウロイから護る戦力は減っていたが、既に手遅れの扶桑の魔女は別として、貞操の危機に晒される確率も同時に減ったので、彼女たちにとっては、どちらかと言えば喜ばしいことだった。
「……ん?」
 部屋の外が騒がしくなる。ネウロイの襲撃かとも思ったが、フレッチャーが何も言って来ないからお客さんというわけでもなさそうだった。
 しばらくすると、ドアが思い切り開かれ見たくない人物が現れる。
「よう!今日もガガっとリベリオン海兵隊アルマ中尉だぜ!」
「閉めてくれ」
 瞬間的にエイミーはティファニーにドアを閉めるように指示する。暑苦しいのは御免である。
「お、おいっ!ひど過ぎないか、この扱い…!」
 色々と喚き散らしていたが、やがて静かになり「折角、偵察任務を譲ってやろうと思ったんだがなー…」と、わざとらしく言って立ち去ろうとする。
「それを先に言え!!」
 エイミーが素早くドアを開け放ち、勢い余って根元から剥ぎ取ってしまう。
 すると、アルマを取り巻いていた水兵たちが目を丸くして彼女を見てきた。
「エイミー。オレはいくらなんでも、艦内で女の下着姿は刺激的すぎると思うぜ?」
 先程まで彼女は下着一枚で溶けていたのだから、当然、今の彼女も下着一枚のあられもない姿というわけだ。
 真っ赤になったエイミーはベッドにダイビングしてシーツに隠れてしまう。暑いのに。
「すみません…。隊長も、暑さで頭がボーっとしちゃってたんだと思います…」
 上官のうっかりにより、ついでに見られてしまったティファニーが上着を羽織って前に出る。健気な子である。
「ま、オレらとしては良いものを見せて貰ったわけだ。感謝するようなことはあっても、怒るようなことはないな」
 アルマが振り向くと、水兵たちも頭をブンブンと上下に振って肯定する。ティファニーとしては、そこを肯定されても困るのだが。


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