綴り
□おちたのはどっち
1ページ/3ページ
「そういや、昨日の事知ってるか?」
「知ってるよ。屋上、しばらく使えないんだってね」
「なんせ、飛び降りだからなあ〜。話によると、結構な美人さんだったらしいじゃねぇか、なんで死んじまったんだか」
「へぇー」
水瀬は身を乗り出して小声で言った。
「それでよぉ、俺のダチから聞いたんだけど…なんかそいつ『空を飛ぶ』なんて言ってたらしいぜ」
話して満足したのか、椅子に腰を下ろした。
「でも結局――」
「落ちた訳なんだなっ」
「お前、いつのまに……」
ふふん、と彼女は誇らしげに腕を組んだ。
「やぁやぁ諸君、今話題の話をしている所に飛び込むのが、私の使命なんでね!」
「相変わらず騒がしい奴だなぁ、お前」
「何よっ、運動バカのあんたに言われたくないわっ」
「なんだってぇ?」
「…栗原、確かに『落ちた』って表現は合ってるよ」
「ほらみなさいっ」
「ちぇっ、まぁそうなんだよなあー」
「実際に、人間がなにも無しに空中を動き回るなんて不可能だ。でも――」
『でも?』
「でも、彼女、冬坂実月が『落ちた』のは地面なんていう固い所じゃない」
「じゃぁどこだって言うんだよ」
そりゃあ――――
僕は、無意識に笑みを浮かべていた。
「『上』だよ」
〆