綴り

□おちたのはどっち
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「そういや、昨日の事知ってるか?」

「知ってるよ。屋上、しばらく使えないんだってね」


「なんせ、飛び降りだからなあ〜。話によると、結構な美人さんだったらしいじゃねぇか、なんで死んじまったんだか」


「へぇー」


水瀬は身を乗り出して小声で言った。

「それでよぉ、俺のダチから聞いたんだけど…なんかそいつ『空を飛ぶ』なんて言ってたらしいぜ」

話して満足したのか、椅子に腰を下ろした。


「でも結局――」

「落ちた訳なんだなっ」


「お前、いつのまに……」

ふふん、と彼女は誇らしげに腕を組んだ。

「やぁやぁ諸君、今話題の話をしている所に飛び込むのが、私の使命なんでね!」


「相変わらず騒がしい奴だなぁ、お前」

「何よっ、運動バカのあんたに言われたくないわっ」

「なんだってぇ?」



「…栗原、確かに『落ちた』って表現は合ってるよ」

「ほらみなさいっ」

「ちぇっ、まぁそうなんだよなあー」

「実際に、人間がなにも無しに空中を動き回るなんて不可能だ。でも――」

『でも?』

「でも、彼女、冬坂実月が『落ちた』のは地面なんていう固い所じゃない」

「じゃぁどこだって言うんだよ」



そりゃあ――――


僕は、無意識に笑みを浮かべていた。




「『上』だよ」



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