王牙

□空白
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丁寧に結われていたはずの髪が少しボサついている。
戦場に不釣り合いの貌をした少年は肩から血を流し虫の息でかろうじで立っている。
鍛え抜かれた技巧で意識が遠退こうと彼は必死に戦っている。
彼は何故そこまでして戦うのか。
答えは明確で簡単だ。
死にたくないから。
この戦いで生き延び、彼の最愛の恋人に会いたいから。
彼はある有名な提督の下で鍛えられた戦士の一人だ。
No.1とはならないが、実質トップクラスの戦闘能力を誇っている。
だからこの激戦区の区間も、提督の見計らいで送られて来たのだ。

辺りはどこを見ても血の海か屍の山々。
生き残っているのは彼を含めても数人程度。
彼は、この場から這い上がろうと必死だった。

***

長い長い戦いが終わり、彼はようやく彼の本拠地の王牙学園に戻る事になった。
学園に戻るのは、もう半年ぶりだ。
ずっとあの過酷な戦場で戦って来たのだ。
さらに半年ぶりに恋人に会える。
喜ばない訳がない。


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