王牙

□空白
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提督「ご苦労だったな」

提督に報告を済ませ、俺は真っ先に自分の部屋ではなく恋人の部屋に向かった。
すれ違う同僚の者が声をかけてくるのを聞き流し、通い慣れた道を進んで行く。
この角を曲がって、二番目の部屋。
二つノックをし、部屋からの返事を待つ。
部屋からは懐かしいあの声が「どうぞ」と言い、俺は部屋の中に吸い込まれた。

ミストレ「エスカバ…」
エスカバ「ミストレ?ミストレ…なのか?」

扉を閉めソファに座っていた彼に勢い良く抱き付いた。
会いたかった。
ずっと会いたいと望んでいた、俺の最愛の恋人。
これ以上ない程強く、もっと強く抱き締めた。

エスカバ「帰って来てたんだな」
ミストレ「辛かった…怖かった…苦しかった…」

ここ半年の事を思い返すと、涙が止まらない。
決して楽とは言えない戦場、いつ敵に狙われるか分からないから一時も気を抜く事が出来ない。
苦しかったけど、エスカバの事を想い俺は必死に生き残って来た。

エスカバ「よく頑張ったな…こんなに小さい体で…」

再び会えた喜び、半年間の空白、変わる事のなかった俺と君の想い。
俺はエスカバの腕の中でも、ひたすら泣き続けた。

***

(君の腕の中は、相変わらず落ち着く)(二度と、お前を離さないからな)


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