王牙

□良い迷惑
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ミストレ「バダップのバカー!」

俺の部屋に勝手に侵入した挙句、暴れたり叫んだりとにかく手が付けられない。
デスクに向かい、敵軍のデータを頭に入れていた俺にとっては良い迷惑だ。
当のミストレは俺にお構い無しに椅子を蹴ったりソファで暴れたりしている。
泣くか叫ぶか暴れるか、一つにして欲しい。
原因も分からないまま泣き叫ばれても埒が明かない。
一旦データから目を離し、ソファの上に居るミストレに振り向く。
ミストレは膝を抱え顔を埋め泣いていた。

バダップ「何の騒ぎだ」
ミストレ「ううっ…エスカバがっ…う…ひっく……」

何かと思えばまたエスカバか。
思わず呆れて溜息をつく。
ミストレとエスカバは周囲は公認の恋人関係に当たる。
いつから二人の関係が始まったかは知らないが、その分野は得意ではないので首を入れない様にしている。
恐らく、今日も変わらず喧嘩や言い合いをしてここに来たんだろう。

ミストレ「ずっとチュー止まりでぇ…俺は早くえっちな事もしたいのにぃ…うわーん!」
バダップ「…」
ミストレ「誘ったのに断られたから……ここにぃ…ひっく…」

何と言う事だ。
その類に関しては苦手なのに。
最低限の性知識はあるが、男同士の事は無知に等しいし俺は恋愛か苦手だ。
告白される事はあっても、誰かを好きになると言う事は一度も経験した事がない。
苦手分野を攻められ、どうする事も出来ず俺は固まってしまった。
ミストレは一頻り泣くと落ち着き、腫らした目で俺に近寄る。

ミストレ「もう、エスカバなんか…。バダップ、俺とエッチな事しようよ」
バダップ「は?ちょ…」

ミストレは椅子に座っていた俺を抱えてベッドに一緒に倒れ込んだ。
何なんだ、これは。
俺の上にミストレが四つん這いに跨り、顔をギリギリまで近付けて来る。
いくら男とは言え、ミストレは妙に女々しい貌の持ち主だ。
思わず異性を感じさせられる。
みるみる自分の顔が紅潮して行く。
しかし止める糧も知らない俺はされる事を受け入れる事しか出来ない。

ミストレ「バダップゥ…」

色気の籠った声で囁かれ、俺の中の何かが昂った気がした。
少しずつ顔が近付き、あと数秒と言ったその瞬間。

エスカバ「ミストレ!」
ミストレ「!エスカバ…」

反射的にミストレは俺の上から除け、ベッドに座り込んだ。

エスカバ「何してるんだ」
ミストレ「だって、エスカバしてくれないから…」
エスカバ「大切なお前を大事にしたいから拒んだんだ!それ位気付けよ、バカ!」
ミストレ「エスカバ…」

そのまま二人は腕を腰に回し合ったまま俺の部屋を後にした。

***

(一体なんなんだ!?)



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