白恋

□独り
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僕が意識を戻した時、周りには何もなく真白な空間にいた。
ここはどこ?
眩しい光の中、少しずつ目を開ける。
僕の目の前には。
眩しい光の先には。
アツヤがいた。

士郎「アツヤ?」

間違いない、アツヤだ。
アツヤに触れたくて手を伸ばす。
いつもみたいに抱きしめて欲しい。

士郎「こっち来て……。会いたかったよ……」

アツヤに向かって手を必死に伸ばす。
早く触れて欲しい。
だけどアツヤは。
僕の手を振り払った。

アツヤ「馬鹿野郎……」

アツヤはたくさんの涙を目に浮かべていた。
泣いてる?
涙は目から零れ落ちアツヤの頬を伝う。

アツヤ「何でだ?何であんなことした?!」

僕を強く抱きしめ叫ぶ。
強く、強く、僕が壊れる程に抱き閉められる。
けど、アツヤは冷たかった。
体温が感じられない。

アツヤ「士郎、お前は一人で頑張らないといけない」
士郎「一人で…?」
アツヤ「そうだ」
士郎「嫌だ……。一緒にいたい」
アツヤ「士郎ならできるから」
士郎「できない。僕はアツヤがいないとダメなんだから」
アツヤ「だから」
士郎「側にいてよ。独りは嫌だ……」

アツヤは僕から離れた。
顔と顔を見合わせ僕の手を強く握った。
アツヤの目は潤み苦しそうに揺れた。

アツヤ「自分が何をしたか、分かってるか?」
士郎「……」
アツヤ「何であんな事をしたんだ」
士郎「……一緒にいたい」

僕からアツヤに縋り付く。
離れたくない。
一緒にいるんだ。

アツヤ「……ごめんな」

その時。
アツヤはふっと姿を消した。
それと同時に目の前が歪んだ。

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