薄桜鬼
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第一章 二幕
ここへ来て早一週間。
一応この時代の格好で男装。
着物は暑くてむれて大変だし、沖田さんから室内で出来る面倒な仕事を「小姓なんだから」と押し付けられ、慣れない境遇になんとも言えないストレスのようなものが溜まっていた。
そんな時は格子窓から中庭を観察する。
昨日は大きな虫がいた。一昨日は綺麗な鳥がいた。その前は花の芽が開いた。
そして今日…
ものすごく暑いから、中庭を覗く余裕も仕事をする気力もなく、ずっと寝転んでいた。
すると中庭から人の声。
「よいしょ…と。ふぅ」
なんだかとても女の子っぽい声だ。どんな人なのか見てやろう、と私は立ち上がって格子窓から中庭を覗いた。
そこには私よりほんの少し年上くらいの女の子。
袴を履いているものの、小柄な体や雰囲気は女の子そのものだった。
「新選組にも女の子がいたんだ…」
つぶやきながら女の子を観察する。
たまに口の中でもごもごと独り言を言いながらあっという間に沢山の洗濯物を干してしまった。
「あ、早く夕餉の準備しないと…」
そう言い、ばたばたと走っていく彼女を見て、自分も何かしようと思い、頼まれていた沖田さんの羽織の修理に取り掛かった。
完成した頃、藤堂さんが夕食を運んできてくれた。
「すみません、運んでもらってしまって…」
謝ってからお膳を受け取る。
私が信頼さえしてもらえれば、自分で取りに行く事ができるのに…
「いいってことよ。
それよりさ、お前、いっつも飯残してるだろ?
お前は夕餉しかもらえてないんだし、これぐらいはちゃんと食えよ?」
そう言い残して藤堂さんは私の部屋を去った。
確かに、一食しかもらえないが、それでも全部平らげるなんて真似、居候の身分では出来なかった。
ご飯とおみそしるを少しずつ頂いたものの、他は申し訳なさで喉を通らなかった。
お膳を下げに来た斎藤さんは
「…食べ物は自然の恵みだ。何か遠慮しているならそれは必要ない。
量を減らすから明日からはきちんと食え。」
とだけ言って行った。
残飯を出すのが勿体無い、ってことかな…
だったら、明日からはもう少し食べよう。
そう思いながら、自分はもう1つ渡されてた着物を縫い始めた