薄桜鬼

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第一章 三幕


「左之さん、監視交代。
もう飯だからさっさと行かねーと、新八さんに盗られるぞ?」

「もうそんな時間か…お前は食ったのか、平助。」
「おう。勝手場でささっとな。
…にしても、飯の度これじゃあめんどくさいよなあ。こいつのだって運ばなきゃなんねえし。」

部屋で寝転んでいた自分の耳にそんな会話が聞こえて、罪悪感が押し寄せてくる。
…やっぱり、邪魔なんだろうな…

「こいつも一緒に食えねえかな?」
「俺は全然構わないと思うんだが、土方さんがなあ…」
「何でそんなに警戒するかな…
あいつ、ほとんど口も利かねえし、雰囲気からして気張り詰めてさ…、ちょっとぐらい部屋から出してやれば気も変わってくるんじゃないかと思うんだ」
「そうだよな。
あんまりこの状態が続くのも悪いし、一回、頼んでみねえか?」
「そうしようぜ!
んじゃ左之さん、ここは俺に任せて飯食ってこいよ」
「ああ、じゃあ後でな!」

足音が遠ざかっていった。


「許可、出たらいいな。」
戸を開いて笑いかけてくれる藤堂さん。

「はい。…でも迷惑じゃないですか?
せっかくのお食事中にお邪魔したら」

「んなことねーよ!飯は大勢で食ったほうが美味いしな!」
「そうなんですか…」
「おう。じゃあこれ、ちゃんと食えよ」


そう言って藤堂さんはお膳を渡してくれた。
斎藤さんの言った通り、少し量が減らしてある。
「いただきます」
と呟いて最初にお浸しを口に入れた。
「辛…!」
醤油の入れすぎか、ものすごく辛い。
辛さを紛らわせるためにお米を口にかきこんだ


それでも舌に残る味を誤魔化せなくて、ほとんど具の無いお味噌汁を飲み干す。

「…辛さでほとんど食べちゃった…」

お膳の上にはあの辛いお浸ししか残っていない。
さすがに食べる気はしなくて、お膳を藤堂さんに渡そうと戸に近寄った時

「お、全部食ってくれたか!」

藤堂さんが顔を出してにっこり笑う。

「あの、でもお浸し…」
「いいんだって!
それはあえてそのまんま出したんだよ。そうしたら他の物も食ってくれるんじゃないかと思ってさ!」
「すみません、気を使わせてしまったみたいで…」

俺はまんまと彼の思惑に乗ってご飯を食べてしまったようだった。
でも彼はそんな事を気にするようでもなく、「もっと気を抜け」とまで言ってくれた。

ずっと硬くなっていた心が少し解けた気がした。
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